シロとクロ
小原あき

シロとクロは
相反する色をして
だけど、寄り添い
補っているようで


二匹はいつも
空き地の隅に
重なるように眠っている
実際は交ざることなく


無造作に生えた緑から
シロとクロは
思い出したかのように動きだす


スーパーの袋に入れてきたパンを
二匹に差し出す
シロは鼻を近付けて
クロがいることを確認すると
少し悲しそうに
パンを食べる


クロにもパンを差し出す
決まってクロは
わたしからのパンを食べない


シロが食べおわると
何も言わずに二匹は
公園へ向かう
シロが水を飲むためだ


クロがものを食べたり飲んだりしているところを
見たことがない
だけれど、クロは
シロと同じように
少しばかり栄養の足りない
野良犬みたいだった


二匹は空気みたいに寄り添う
相反する色をして
だけれど
二匹はまったく同じ生きものなのだ


クロがものを食べている
そんな夢を見た
わたしと同じ形をした
わたしの影からもらったパンを
シロがいるのを確認して
少し悲しそうに食べている
そんな夢


青い空が
少しばかり寂しい日
いつもの空き地に
シロの亡骸が落ちていた


傍にはクロが
悲しそうにうなだれている


しばらくそっと二匹を見ていると
クロはシロを埋葬しはじめた
一通り終えると
空き地の隅に
ひとつの小さな山ができていた


クロが涙を堪えている
どれだけの絆が
二匹の間にあったのだろう

涙が流れた


次の日
クロの亡骸が落ちていた
だけれど、それは
シロの亡骸だった


どこまでも二匹は
離れなかった






自由詩 シロとクロ Copyright 小原あき 2007-09-17 19:12:03
notebook Home 戻る  過去 未来