葦間さんの旅日記その1
mizu K


2006年8月26日

旅の話


八戸へ向かう新幹線のなかでうつらうつらしながら
びゅんびゅんうしろに走っていく景色をぼんやり
ああ、この辺には岩手軽便鉄道が通っていたのだ
と ふと思い出し
思い出したついでの途中下車
してみれば白いホームにぽつりと旅行鞄とならんで
気がつけば私は
銀河ステーションに立っていたのでした


透き通った空の下
線路はどこまでもどこまでも続いていて
遠くのほうまで延びています
新幹線ではぼんやりしていましたが
すずめらしい・・・じゃなかった
めずらしいのでホームをきょろきょろしていますと
ぽつりぽつりと待合いの人がいるようです
割合い近くにいらっしゃるのは
きょうの猫村さん・・・じゃなかった
黒猫顔のすらりとした紳士で
まあ、すてき
と まちの猫村さん・・・じゃなかった
まちのお嬢さん猫がみんな目をひかれて
顔もいっしょにつられて
首もいっしょにニャーとひっぱられていきそうな
そんなすてきな猫さんです
ので 私もちょっとどぎまぎして緊張して
つい喉からにゃあと声がもれ・・・じゃなかった
はずかしいことに
おなかがぐうと鳴ったものですから
赤面するやら湯気がのぼるやら
もう温泉の湯上り気分で
心臓もどっくんどっくん


するとそのすてきな猫の紳士は
えっへん とせきばらいなさいまして
それじゃあ私も
えっへん と真似してみますと
黒猫の紳士の目がするりと細くなった様子を
目の端で感じました
まあ うれしい
と にこにこしていますと
(はたから見るとにやにやかもしれませんが)


すると空のどこかから
「ふります、ふります」
と 声がします
あれれ。と思ってきょろきょろしていますと
しばらくしてやっぱり
「ふります、ふります」
と 声が聞こえます


なにかしらねー
なんの声かしらねー
と 思っていますとふいに


気のせいですよ


と おとなりからすてきなバリトンの音が聞こえまして
えっ と見ると
黒猫の紳士はやっぱりすらりとすましていらっしゃって
でもすこしだけ目を細めたみたいで


それからやっぱり2人ともホームの前をむいて
静かにたたずんでいたのでした




未詩・独白 葦間さんの旅日記その1 Copyright mizu K 2007-09-17 18:48:01
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