皆既月食発生日
木屋 亞万

皆の集まる前で反転する世界に漏れてくるのは赤い光で現像されていく想像が生暖かい風に乾かされ浮かび上がる光と赤い目

既に焼き付けられた紙を前にしてくり貫くまでも憎めず塗りつぶすには惜しく火で燃やすことも出来ない震える指先とあの日

月日が経てば香りは薄れていくが記録は何一つ褪せないままできっかけの手紙がまだ引き出しで眠っている指汗のついた便箋

食事にでも行く予定だったのに一人だけ道をそれていくけれど穴など残らずあの人の影が自然に埋めていくさっきまでの隙間


自由詩 皆既月食発生日 Copyright 木屋 亞万 2007-08-28 21:54:47
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