なみだ
水町綜助

なみだというやつは
潤んで
ぷくりと膨らんだなら
ふるえ
映えたつめたい青色をくるりと丸めて
珠の中
ちいさな
とてもちいさな
気泡が
深海魚の呼吸音をたてる
ふたつ
もうひとつちいさく
ひとつ

海で
おぼれたみたい
のまれて
耳の奥で
鳴った音と
おなじだよ
あんなとき
とても孤独で
日々は恋しくなる
とてもおなかが空いたときみたいに


ビルの上のクレーン
ひきあげられる鉄骨
赤錆がふきだしている
ひとつ
高い空にうちならされる音
しらじらしく
音叉のふるえ))
森の奥の窓辺にも響くだろう
地球みたいに溜まって
ふくらんだなみだに
まだながれることをしないなみだに

どんな味がするかしらない

僕はきっと噎せながらぎゅうどんをたべるだろう
非常階段のてっぺんから
ライステラスの霊園をのぞんで
なだらかに
ひかりに長くひき伸ばされた墓碑
そんな
すでに終わったふちどりを
つよくなぞる鉛筆は
連続した僕の
ポケットに

白くただ光るいのちを象るのは

音の反響で

斜めに傾いでぼうしをかぶる
きみののどぼとけに






自由詩 なみだ Copyright 水町綜助 2007-08-13 10:53:59
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