水町綜助

はやい
から

きれて
とんでる
けしきが
ちかくの
草むら
なんて
もう
線だ
恐ろしいくらい
長い
線だ
空気が
固い
いま
どれだけ
もう
壁みたいで
いたい
めが
いたい
まぶたを
おしあげてくる
かわかして
かわいて
なみだが
あつくなって
わいて
また
吹き飛ばして
筋に
なみだの
線に
なる


イネが
風に
丸まって
かしゃんと
たたき
割られて
こなごなに
かがやいて
吹き
流れる
そんな
ものが
いくつも
いくつも
割れて
吹き飛んでいく

木々は
こんちゅうを
孕んだ
ままで
大きく
たわんで
泣きじゃくって
線に
なる

たくさんの
家家の

とりどりの
屋根が
遠く
みっしりと
凭れ
合っている
赤が
青を
覆い
風が
滲ませる
朝食の
においが
しない


一本の
線の
上を
円が
回り
はしっている
吹き
飛んでいく
目に
見える
ものには
さわれ
ない


さわれ
ない
まま
町と
森を
抜けた

石垣を
過ぎると
いちど
ぬれた
草むらの
匂いが
して
風の
向きが
変わって
それで
うみが開けた
まっすぐの
線と
して
いま
平行に

うなばらが
さらさらと
かがやく
叩き
割った
ガラス
みたいに

数え
られない
ひと
ひと
ひとの
あしあとが
波となって
うみに
きざまれて
打ち
寄せる
たび
飲み込み
打ち消し
数え
られない
ただ
音が
聞こえる

ひと
びとは
海岸に
向かって
歩いて
きている
ようだ

ちかづく
ほどに
ぼくには
見えない
吹き
飛んで
いく

挨拶と
上げた
手が
滲んで
流れて
しまう

とおく
目を凝らすと
風で
また
涙が
でる
じわりと
熱く
なって
溜まって
ふるえたなら
ある
切れ目から
こぼれ
散り飛ぶ

それでも
遠くを
みたなら

ゆるやかな
曲線の
海の
果てに
ひかりに
とばされた
線のうえに
波の
はじまるところに
列車が走っているのが見える

銀色の
三両編成が
白い光を
流して
走っている

同じ
はやさだからか
はっきりと
金属の
たわみ
そこに
映った光の
波紋までもが
見える

車窓には
逆光に
黒く
ひと
びとが
ちいさく
すわっていた





















自由詩Copyright 水町綜助 2007-07-09 04:14:26
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