八月の輪郭
水町綜助






だからたとえば犬のように
白黒でしかものが見えていなかったとしても
濃淡の薄れゆくところ
色彩の変わるところが
あたらしく欲求がなりかわるところで
ぼくが輪郭と呼んでいたものだったので

思い返してみても
誰も鉛筆を持っていやしなかったし
空に腕だってなかっただろう
五本指なんていうものは

雨が降れば視界はにじむね
それで混ざる色もあるだろう
たとえばかれは水彩だ
もうひとりのかれは油彩だから溶け出したりしないね

でも八月が来れば
にじんでいったもの達も
みんな乾いて
元通りだよ

それでこんどは光がぜんぶ飛ばすけどね
期待しちゃいけない
それは眩しくて見えなくなるだけだ
瞳に何本も音もなく刺し込まれる
痛みに目を細めて
夕焼けが破裂するなか静かな汗をかいて
それで口にできる言葉は
ただひとつだよ
つぶやくだけだ
あついと
のどぼとけが
上下して






自由詩 八月の輪郭 Copyright 水町綜助 2007-07-07 10:28:56
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