デッキシューズと貝殻
atsuchan69

七分袖のボーダーTシャツに
リネンの濃紺ジャケットを羽織り
干して乾いたチノーズを穿いているけど
やっぱりチノパンは塩水に濡れて
少しダボダボになったやつが好きだナ
 (不自然に重いし、
酷く不快な感触がリアルでいいよ

渚では無数のヨットが
沖に出ているのが見える
防波堤の先端に
日傘をさした もう、若くない女がひとり
遠く、海を見つめて立っていた

マリーナの隣り
砂粒に塗れて――
ゴミだらけのビーチにならぶ
どうも海の家っていうか、
ぶっちゃけ露店じみた簾小屋の
焼いてる烏賊の醤油くさい
あのジャパニーズな香り

恋は砂浜で
かなり傷ついた奴を、
もうだいぶ昔に拾ったかもね
うん、たくさんセックスもしたけど
きっと女は洞穴だ、、

青くかがやく無数の鍾乳石の
欲望が大地に向かって垂れる暗闇に
ああ、なぜだか本当の愛なんて
皆目微塵もなかったよ

えーと、ホテルでは
最低限のマナーを守るべく
皺くちゃのジャケットを着、
セルフレームのサングラスも外し
遊び人じみた浅黒い顔が胡散臭いが
それでも精一杯爽やかな笑みを作って
金持ちのマダムを 騙す )))
いや、そんな気持なんてサラサラもなく

あー、でも――
新車のポルシェ買ってくれるなら
その黴の生えた陰部に
こってり塗りたくったバターでも
マヨネーズだってナンダって舐めてやるぞ!

俺は 明日の朝、
こっそり一人乗りヨットで外洋に出る
梅干入りと、鮭と、塩昆布の
大きなオニギリを三つ持ってな

漁師の娘が拵えてくれたよ
しっかりと海苔で巻いて
沢庵とウツボの干物をひと欠けら、
海では眩しく光るアルミ箔で包んでさ

寝る前に、どうも足の裏が痛いから
ベッドに座って空振りキックして、
布地のデッキシューズを脱げば、なんだ?
小さなピンク色した巻貝を踵で踏んでいた
痛いけどオマエ、みょーに可愛らしいナ

そっと枕の下に
貝殻を敷けば――
忘れてしまった あの渚の恋が
ふたたび疼くのを感じるぜ、

悪戯な潮風が窓辺に訪れては
どよめくような、海鳴りのする夜だ










自由詩 デッキシューズと貝殻 Copyright atsuchan69 2007-07-09 01:12:19
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