キラメキ
マッドビースト

 
 冬の間に完成された景色は
 硝子瓶に詰められてきらきらしていた
 細やかなバランスをとって
 その中を動くものはなかった二月

 桜は荘厳に咲いて
 壮麗に散って
 始まる年ごとに生まれ
 生まれる度に愛された
 今年も私は憧れていた三月

 
 四月の今日
 真っ青な空から街にそそぐ光はキラメキ
 天空の剣
 
 昨日まであんなに私を拒んでいた
 強張った空気がシーツのように簡単に裂かれて
 開いた傷から流れ込む春
 
 飛び散る欠片の一つ一つに違う色
 それぞれに違う始まりのビジョン 
 
 私の中の思春期は何か
 欠片に映る終りの不安に悩み
 始りの苦味に口を閉ざして俯いている
 まだ定まらない陽気に裏切られることを怖れて

 色も強さも分け隔てなく
 貪欲に光を吸い込む若芽の奔放さと
 まだ開ききらない蕾の頑なさを
 老獪さが羨んでいる

 
 剣が盾を撃つたびに
 火花を散らすキラメキ

 街の空気を削りきった光は
 丘の上の黒く切立ったビルディングを照らした
 光は砕け 
 星屑のような粉になって建物をつつんだ
 黒水晶の塔はその頂きのほうで
 太陽に届いてしまったように燦然としていて
 その行方を見届けることはできなかったが
 ギラついたクロガネ色のキラメキは
 私の躊躇など気にもせず
 初夏を呼ぶシグナルを既に発し始めているようだった 

 


自由詩 キラメキ Copyright マッドビースト 2003-05-06 22:01:06
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