『von-Gierke・華音』
川村 透

--フォン・ギエルケ
 不協和音
 von-Gierke病

深夜、
僕は、
娘の病名を、韻律のように
繰り返し繰り返し繰り返す

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

僕たちの花
カノン、Kanon、華音

    名前は、『華音(かのん)』とつけました。
   未来に向かって花開くオト響かせ、健やかに育ちますよーに。
   バッヘルベルの「カノン (Canon)」のように、くりかえし
   くりかえし自分というたったひとつの旋律をなぞり、育て上
   げて行けますよーに。観音様のように慈愛に満ちて、菩薩の
   意志を花開くともしびのように前に掲げて、人と人との間で
   真摯に生きてゆけますよーに。


--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

僕は
ひとつぶの黒い葡萄を喉に詰まらせたまま
糊口、に、イル
だけ、の、よこしまな腐った蜜柑だ

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

僕の
口を糊、するのは
名前のない馬の
匂いのないエロチカ/ただしcolorful

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

僕に
刻印された
蒼い蒼い孤高の色
こんこんと溢れる、
    「ココニイル」
ことの、「ふざい」と「ふあん」

--von-Gierke
フォン・ギエルケ
不協和音

名前のない馬が猛るみたい
で、
ぐっと、Fantastic
だろ?
かみさま

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

天使の歯軋りが聞こえる

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

深夜、
机に伏して、ドロドロ、と眠る
僕の胸の中、から、不意に
ソーダのような
柑橘系の初夏が匂いたち
真新しい芝生の上を
君の白い犬が
尻尾を追いかけて、くるくる
くるくる廻りながら吠えている

和音和音和音、

和音・ギエルケ。

--von-Gierke
 フォン・ギエルケ
 不協和音

和 音・ギエルケ。
和 音・ギエルケ。

ソラ、ミミ、デハ、ナイ。
ホホ、ヲ、ヌラセ、ソーダ!

僕たちの花
花音、カノン、Kanon、華音だ。

僕はCRTの明かりの中
ひとしずくの福音を頬に感じながら
ミミ、ヲ、スマス。


--キス 和 音・ギエルケ カノン。


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(2003/05/02)
【かのん、のリンク】
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自由詩 『von-Gierke・華音』 Copyright 川村 透 2003-05-02 09:36:07
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