石瀬琳々

青い
夜明けのような苧環おだまきの花を行き交い
小さな蜂が羽を震わせている
光は飴色に輪を広げ
触れるたびに緑の葉は揺れ動く
あいさつのように かすかにそっと


      小ぎれいな窓に人影が見える
      カーテンを開け放ち
      じっと窓の外を見ている


緑の
両手を差し出し秋楡あきにれは風を呼ぶ
真新しい若い葉は木陰を作り
その枝にぶらさがる古びたぶらんこ
誰かを待っているのかのようにかしいでいる
夢を見ているのか それとも風に


      その瞳は一点を見つめている
      唇を小さく結び
      じっと窓の外を見ている


赤く
チェリーセージの花が草間から覗き
緑の中にそこだけ鮮やかな染み
やがて確かな種をいくつも内包して
また繰り返す命のはかない営み
明日を知っているのか 今もこの時も


      人影は身じろぎもしない
      じっと窓の外を見ている
      明るすぎる世界から遠く
      ただ窓の外を



       


自由詩Copyright 石瀬琳々 2007-05-11 14:37:23
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