光る墓標
大覚アキラ

明け方のビル群は
墓標のように見える

おれはタクシーを拾って
車のまばらな御堂筋を
一直線に南下しながら
疲れた頭の片隅では
死ぬまでに稼げる金を
ぼんやりと計算している

アスファルトの微妙な起伏が
磨り減ったタイヤから伝わって
バックシートに沈み込んだ
おれの背骨を軋ませる

カラスの羽根を生やした天使が
フロントガラスに唾を吐きかけた

カーラジオから流れる
流行のポップソングが
命の重さってやつを
切なげに歌っている

朝日を反射するビルが
目も眩むような輝きを放って
おれを乗せたタクシーは
逆光の中を
黒い点になって
吸い込まれていく

墓標に記された名は
眩しすぎて読めない


自由詩 光る墓標 Copyright 大覚アキラ 2007-03-19 18:34:42
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