フォーマルハウト
ダーザイン

巨大な石版にきざまれた
柘榴石の星座がきしむ
西の方に5分ほど
かちりと音を立てて静止していた時が進む

一億光年の夜が流れ
廃棄物処理場に水たまりのような鏡
割れた月が赤々と燃えている

鉛色の護岸に覆われた河のほうから
霧の匂いが漂いはじめた窓を閉じる
眠れぬ夜が茫々と白象の肌をなで
チェルノブイリの空には
放射性降灰が静かに降りつむ

かつて河岸段丘があったころには
誰もいない野原がどこまでもつづいており
深夜の魚群が吐く泡が
川上へゆらぎわたる風をやわらかく包んでいた
一本の送電線が天の楽譜をつまびくと
小さな街灯の明るみのなかで
ときには懐かしい唄を奏でてくれた


影絵芝居の都市が窓の外に点灯している
風ににじむ送電線が空を分かち
星々への階は闇の中を斜めに突き上げる
水晶の寝台には微かに潮解の兆しがあり
不安を覚えた私は起き上がる
テレビのスイッチを入れる
ブラウン管の青がふるえ
原子炉の炉心を妖しく照らすチェレンコフ光

青い電子の井戸の底から女の顔が浮かび上がる
水面がゆらぎ藁色の髪毛が広がる
私は女の頭を抱え髪をなでる
女の赤い口がかすかに開き 笑う
私の手をはねのけてゆるりとまわると
彼女は尾びれで水面を打ち 潜っていった


# フォーマルハウトは魚座の一等星で、
 周囲に明るい星が無い為「南の孤独な魚」などと呼ばれています。
↓チェレンコフ光はこれです
画像http://atomsun2.atom.musashi-tech.ac.jp/pic1.htm
説明http://www.ne.jp/asahi/ogi/home/back/095.html
かってにリンク(^^;ワラ


自由詩 フォーマルハウト Copyright ダーザイン 2004-04-22 20:09:50縦
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