こえ
はらだまさる






こえ、


ぼくを剥いてゆく
この
あかぐろい
にんげん、を
剥いてゆく
こえ、



きみの
こえ、


ふたしかな
やさしさ


ぼくの
やわらかい
ところに
爪をたてる


といき、


あまい

といき


サンダル・ウッドの
首飾り


うつくしいよ


あさっては
仏滅だよ


空は
あわい、
あいまいな
かおで


いま

よびもどす



こえ、


ぼくを剥いてゆく
この
あかぐろい
にんげん、を
剥いてゆく


こえ、




ぼくは
きみに内緒で
何年か振りに
太陽の塔に腰を下ろして
ガンジャを吸って
まっしろい
宇宙で


ずっと
ひとりぼっちで


ずっと
ずっと
ひとりで


近くは静寂で
遠くは喧騒で


きみは
おいしいタルト・タタンを
作ったあと、

喘息の吸飲薬を吸って
しずかに


眠っている


かわいい寝顔で




ぼくは
梅田で
阿佐ヶ谷で
富士山の五合目で
カオサン・ロードのゲストハウスで
波照間島の浜辺で
マナリーの山で
札幌の家具屋で
中州の屋台で


アムスのコーヒーショップで
屋久島の民宿で
システィーナ礼拝堂で
元町のジャズバーで
パスツールの友達の家で
大津の農園レストランで
上終町の階段で
成城のY字路で
ウブドの坂道で


膝を抱えて
うつむいたまま


きみを

忘れてた


ひとりで

ひとりぼっちで

さみしさと
うまくやってる、

つもりだった


きみは
眠っていて


ぼくは
しろい宇宙で

身体中、
ゴムの皮膜で覆われて
息ができない夢を
みながら


探していた


慎重156センチの
大きなきみの
まんなかで


ただよって
迷って
歪んで
意地をはって

匂いがわからない
きみの


その



こえ、


ぼくを剥いてゆく
この
あかぐろい
にんげん、を
剥いてゆく
こえ、



きみの
こえ、


ふたしかな
やさしさ


ぼくの
やわらかい
ところに
噛みつく


こえ、




ひとりぼっちの


ぼくが
しろい宇宙で


必死になって
探していた







こえ。












自由詩 こえ Copyright はらだまさる 2007-03-15 20:06:43
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