感謝する死体
はらだまさる




今日、午前中は車の洗車をしていた。
洗車は綺麗になると気持ち良いし、楽しいし、良い運動になる。
そんな洗車しながら色んな事に思いを巡らせていた。
洗車は僕にとって楽しい、けれど蛇口を捻れば当たり前のように流れてゆく水や
ホームセンターで買ってきた洗剤によって死んでしまう生命がいるんだなぁ、とか。
洗車も戦車もその点では似てるなぁ、とか。


絶対的な善はないよなぁ、とか。
例えばある有名な作家さんが「絶対、好きな事をした方がいい」と
言ってるのを聞いて「そうだ」と思ってる自分を疑わない人間が多いよなぁとか。
僕の周りには芸術に関心の高い友人が多いけれど
「やりたくないこと」をやってる人をどこか馬鹿にする風潮があるよなぁ、とか。
「絶対、好きな事をした方がいい」と云うのが所謂、一元論で過激な表現だけど
それが善だと思い込んでる人間が如何に多いか、とか。


価値の認識が根本から間違ってるんじゃないんだろうか、とか。
俺もお前も偶に独善に陥ってるな、とか。
沈黙と戦うのって生きるのに似てるな、とか。
沈黙を破るために音楽や言葉が生まれたんだろうな、とか。
ミュージシャンや詩人は寂しがり屋が嵩じて、というか
その孤独に絶えられなくて言葉や音楽が溢れてくる側面もあるよな、とか。
寂しさの哲学なんて死んでも流行んないよな。




俺を殺してくれたこの世界に感謝するよ。


本当に殺してくれて感謝してるよ。


俺は感謝する死体だよ。







ハロー、ベイビー♪









自由詩 感謝する死体 Copyright はらだまさる 2007-03-09 20:47:56
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