拡張子(別稿)
はらだまさる



しろいそらから
八百万のちいさな
ちいさなほしが
散弾され、落ちてくる。


かれらはまず
手をふってぜつぼうする、
それからとぶ、およぐ、まぜる、
それからたびにでてひとり。
あちこちひとりで
リゾームする。


あんたさあ、ちょっとキモイんだよね
あんたって結局ただカッコつけてるだけじゃない、
その劣等感鍛えて、難しい単語並べてカッコつけてもさあ、
子犬に洋服着せてるお目出度い馬鹿くらいキモイのよ、
日本男児か侍かマザコンなのか知らないけど
あんたはただカッコつけてるだけよ、
高感度ぶって好感度あげようってのもダサいし、
わたしがちょっと色目使ったらシッポ振っちゃって
普段は硬派ぶって世間にメンチ切っていきがってても
わたしの前じゃただの子犬じゃない、
自己犠牲の美学もいいけど
古いし臭いしキモイのよ、


俺はさあ、きみに出会えて本当にうれしいよ
その言葉のどれもが俺のインテリジェンスを優しく傷つけてくれる、
きみのような絶対的な美しさのまえじゃ、
俺なんて存在自体が自虐になるよ
ああ、俺はきみのその美しさを
真っ白に汚したい、



おちんちんをしごく、
おまんこをなめる、
ぽえむ。


わたしのパンツ脱がせたかったら
兎に角、詩人でも日雇い労働でもどんなことしてでも稼いでよ、
珈琲ひとつとっても無農薬の焙煎したての生豆を挽いた
サイフォン式で煎れた珈琲じゃなきゃ
わたし嫌なの、


(この女、煽ててりゃ調子乗りやがって
(破裂寸前のおれの精子をドックンドックン
(そのまんこにぶち込んでやるよ、
(馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって、くそう
(くそう、くそう、くそう、くそう、くそう、くそう、


ピアノも欲しいの、スタンウエイじゃなきゃ嫌なのよ、
あんた私に買ってくれるの?
あんたはわたしに精液ぶっかけて
内心は虚しいかもしんないけど、それでことなきを得るんだから
わたしのことも当然満たせてくれなきゃ、


(でも何てナイーブで美しい人なのかしら?
(本気でかわいいわ、この子犬ちゃん、
(あなたをこうして虐めているけれど、本心は逆なのよ、
(あなたに気がついて欲しいの、ゆっくり
(じっくりと考えたらわかることなの、
(わたしはあなたの敵じゃないわ、



おまんこをひらく、
おちんちんをいれる、
ぽえむ。


要は、資本主義なんだからお金なのよ、
あんたがやってることは単なるきれいごとなのよ、
あんたがもっと次元の違う深さでこの世界の在り様を
憂れいているのはわかるわ、
だけど、何が何でも働いて生きて
それと同時に未来をちゃんと築いていかなくちゃ、
あなたのその崇高な哲学と思想だけじゃ
わたしたちには明日がないの、
今日食べるごはんがないの、
眠るところもないの、
わかる?


くそう、くそう、
キレイごととはなんだい?
日々の生活を圧迫するものは確かにきみが言うものだ、
しかし、真に賢明であることとはなんだろうか?
資本主義的で合理的な賢明さで
遠くの人が貧困で苦しんで冒したくない罪や
殺し合いや自虐で死んでゆく現実があるんだよ、
きみはそのことを、俺よりも深く考えたことがあるのかい?
そんな訳ないよな、俺が必死で世界中の
書物や映像や音楽や政治や宗教に
全身をあずけているあいだ、
きみは身体に優しくておいしい食事や
美しい人達との楽しい会話やスポーツ、慈善活動、
セックスをはじめとする様々な快楽に
全身をあずけているんだからね、



おまんこをおかわりする、
おちんちんをおかわりする、
ぽえむ。


そんなもの賢くあろうとするよりもただカッコつけたいだけよ、
性欲を押さえ込んで生きようなんて狂気の沙汰よ、
もう一度言うわ、カッコつけたいだけなのよ、
あんたがどんな正当な理由付けをしたって
センスの良さと頭の良さをみせつけるように
どんな美辞麗句を並べたって
世間はあなたをそうとしか見ないわよ、
はっきりいってキモイのよ、
それであなたが苦しんで、わたしを悲しませて
あなたが私を苦しめて、あなた自身も苦しむのよ
何かいいことあって?どこにもハッピーなんてないわ!
あんたがわたしに言葉で魔法をかけて支配して
議論に勝利して自分を正当化して悦に入って
単にカッコつけてるだけじゃない、
あんたがカッコつけたいだけじゃないの、
そういう姿勢って結局、不幸しか生まないのよ、
あんたはそれで幸せかもしれないけれど
あんただけの幸せのためにどれだけの人が
悲しんで苦しんでると思って?
遠くを見つめることも大切だけど
何で身近な私たちを犠牲にするの?
遠くの人が死ぬのは悲しくて辛いけれど
私がそれで苦しんで死んでも構わないの?
芸術のため?愛する国のため?未来のため?
そんなの嘘よ、こんなにも私を苦しめて
本末転倒じゃない、何でそれがわからないの?
あなたは誰も愛せちゃいないわ、
自分の言葉に酔ってるだけ、
どうしようもないナルシスよ、


うるさい、うるさい、
きみがこんなにも馬鹿女だとは思いもしなかったよ、
ああ、もうきみにはうんざりだ、話にならない、
これだから無学の奴は困る、俺の悲しみや苦しみなんて
誰にもわかる訳がないんだ、きみはそんな馬鹿じゃないと思っていたよ、
俺の劣等感を抱きしめてるつもりなのか、このアバズレ女め、
きみはそうやって何人の陰茎を咥えてきたんだ、
ああ気持ちが悪い、馬鹿にするなこの奴隷女!
俺がこんなにもきみを愛しているというのに
何故それがわからないんだ、ピュピュっ、



おまんこからあふれる、
おちんちんがしぼむ、
ぽえむ。


ごめん、
きみをこんなに苦しめるつもりじゃなかったんだ、
ただ知れば知るほど、この世界が・・・、
きみは何も悪くないんだよ、
俺が、この俺の才能が異常なんだ、


あんたはいつだってそうよ、
その小さな机の上でしか生きられない可哀想な人よ、
だけどわたしはあなたの子供が欲しいの、
だから今日のことも、
そして、今までのことも
ぜんぶ、許してあげる


よしよし、
よしよし、してあげる。




しろいそらから
八百万のちいさな
ちいさなほしが
散弾され、おちてくる。


ぼくらはまず
手をあらってあいさつする、
それからはく、すう、とめる、
それからたびにでてひとり。
あちこちはだかで
かんじる、
かんがえる。


まるをかいて
かがやきながら
落下しつづける、
かいてんの
えいえん、


しろい、
そらも、
たいようも、
きみも、


全部。



きみを、壊すな。










未詩・独白 拡張子(別稿) Copyright はらだまさる 2007-03-08 14:58:51
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