二十一世紀少年
大覚アキラ

池袋とか新宿とか
そんな
詩みたいにきれいな響きを持った名前の街は
おれたちの暮らす街にはないので
とりあえずできることといえば
コンビニの前にたむろしている若者にビクビクしながら
そいつらをぶちのめす妄想を楽しむことぐらいだ

コンビニの前でスクーターにまたがったまま馬鹿笑いしている若者の
薄っぺらな胸倉を掴んで引き倒し
にやけた顔面をレッドウイングのソールで踏み潰す

という妄想

顔面を踏み潰された若者は
どこが目でどこが鼻でどこが口なのかわからなくなった血まみれの顔で
泣き喚きながらのたうちまわっている

という妄想

血まみれの若者の仲間が振り回すナイフを
ジャッキー・チェンのように右足で蹴り飛ばしたおれは
そいつのみぞおちに正拳突きを喰らわせる

という妄想

ケータイで呼び出されたそいつらの知り合いのヤクザ者が現れ
いとも簡単にガムテープで拘束されたおれは
黒塗りのクラウンのトランクに放り込まれてしまう

という妄想

どこかよく分からない場所に運ばれて行きながら
真っ暗なトランクの中で死の恐怖に怯えて
ガタガタ震えながら失禁してしまう

という妄想

小便の匂いに満たされた暗闇の中で
おれは夢を見る
生まれたときから
今に至るまでの数十年間の時間を
猛スピードで反芻する

そんな夢を見る

世界がまだ
昭和だったころ
戦争が終わって
街が造りなおされて
真新しいアスファルトの上を
排気ガスを撒き散らしながら車が走り回るようになったころ
おれは生まれた

人間を乗せたロケットが月に行ったり
巨大な鉄球がどっかの山荘をぶっ壊したり
銀行に立て篭もった強盗が突入した機動隊に射殺されたり
工場が垂れ流した廃水のせいで漁村の人々が病気になったりするのを
みんなブラウン管に釘付けになって見ていたのは
つい最近のことのように思えるのに
なんだよいったい
いつの間に二十一世紀になっちまったんだよ

二十一世紀になってもおれたちの暮らす街の名前は
池袋とか新宿とか
そんな
詩みたいにきれいな響きを持った名前じゃないから
とりあえずできることといえば
コンビニの前にたむろしている若者にビクビクしながら
そいつらをぶちのめす妄想を楽しむことぐらいだ

コンビニの前でスクーターにまたがったまま馬鹿笑いしている若者の
薄っぺらな胸倉を掴んで引き倒し
にやけた顔面をレッドウイングのソールで踏み潰し
顔面を踏み潰された若者は
どこが目でどこが鼻でどこが口なのかわからなくなった血まみれの顔で
泣き喚きながらのたうちまわり
血まみれの若者の仲間が振り回すナイフを
ジャッキー・チェンのように右足で蹴り飛ばしたおれは
そいつのみぞおちに正拳突きを喰らわせ
ケータイで呼び出されたそいつらの知り合いのヤクザ者が現れ
いとも簡単にガムテープで拘束されたおれは
黒塗りのクラウンのトランクに放り込まれてしまい
どこかよく分からない場所に運ばれて行きながら
真っ暗なトランクの中で死の恐怖に怯えて
ガタガタ震えながら失禁してしまい
小便の匂いに満たされた暗闇の中で
おれは夢を見る
生まれたときから
今に至るまでの
数十年間の時間を
猛スピードで
反芻する

そんな
夢を見る

何も

映像を

映していない

プラズマテレビが

暗闇の中で

眩しいぐらいに

光を

放って

いる

いったいどこだろうここは

ああ

ここはおれの頭の中だったんだな


自由詩 二十一世紀少年 Copyright 大覚アキラ 2007-02-21 21:41:37
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