おはよう、地獄の戦士たち
若原光彦

もっとみんなが傷つけばいいな
何日も布団の中で過ごさなきゃならなくなるくらい
コップをつかむ力すら出なくなるくらい
そしてもっと憎しみあえばいいのにな
どうして自分がこんな目にあうんだと言って
誰のせいなのか見当をつけて言いがかりをして悪者を作って
無言電話かけて動物の死骸を送りつけたりして
不眠症にでもなんにでもしあえばいいのにな
相手を絶対に許さなければいいのにな
もっと恨みあえばいいのにな
あんな奴いなければいいと願ったらいいのに
本気で誰かの死を祈ればいいのに
他人を変えようとするとか勝とうとするとか
不幸を祈るとかそんな生やさしいものじゃなくて
ギラギラ光る包丁を握って決意したらいいのにな
殺しあえばいいのにな
そして本当に純真な人だけが残る
なあんてことも起こらないほうがいいな
そんな希望はちりひとつ残さないで
誰もがくまなく劣悪になって
うらぶれた気持ちになって
何故だどうしてだ何がいけなかったんだって
取り返しのつかない気持ちで息絶えたらいいのにな
地獄を定員オーバーにするんだ
こんなシステムはぶち壊しにするんだ
囚人たちが全員みんな
自分は悪くないって言い出すんだ
処刑道具で鬼や悪魔に襲いかかって
罪深い人間が天国へあふれ出して
憤りに血走った目で
聖人たちの喉に剣を突きつけるんだ
誰もこんなの望んじゃいなかったと言って
お前らも同罪だお前らが元凶だと口々に叫んで
全ての神を屠っていくんだ
それから勝利を宣言して
ミッションを負傷を死闘を自慢しあって
散らばっていくんだ
それぞれの家へ
たがいに二度と出会わないことを願いながら
帰るんだ
新しい地球へ


未詩・独白 おはよう、地獄の戦士たち Copyright 若原光彦 2007-01-31 03:53:48縦
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