せいかつのために
ふるる

背が高くて猫背のハラピンが
丸めた背中の内側で何か書いている

「せいかつのために詩を書いてるんだ」

試しに読ませてもらうと

「星」  作 ハラピン

星をひとつぶ食べたいな

食べたらお腹が光るかな

だと

もう一つ


「お腹」  作 ハラピン

お腹が減ったよちょう減った

いや、子供電話相談室に電話しよう

だと
何が「いや、」なんだか

これじゃあだめなんじゃないか
と言うとむきになった

「せいかつのために書いてるんだ!もんくあるか」

大きな耳をびくびくさせて言った
やばい怒った

ハラピンはぷいと向こうを向いて、よいしょと腰をあげた
原稿用紙を買ってくるそうだ

ハラピン痩せたなあ
と、思った

次の日
また何か書いている

いっぱいの束になった原稿用紙をとんとんとそろえて
きちんと封筒に入れて
ふー、とため息
これから出版社へ持ち込みに行くんだそうだ

「せいかつのためだからな」

またため息だ

どうせバナナの皮みたいになって帰ってくるんだろう

帰ってきたら、クリームたっぷりホットココアをおごってやるから

早く行ってきな



自由詩 せいかつのために Copyright ふるる 2007-01-12 12:28:53
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