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気持はいつも
うち側へはじけたから
つまらない奴だと言われていた
たしかにわたしは
つまらぬ女で
するすると全部抜けていってしまうのだ
やって来て 去っていく
いくつもの時間 ....
だれもきょう
ここにいなくても良いのだ
錆びたてんびん座
図形
意味なしのことば
切り分けられる空間
ここにいなくても良いのだ
うつむかなくてもいいし
生きていなくてもいい
....
こまかくなったからだに紐をつけてつめたい夜へ引きずります
もうすこし(もうすこし)ときこえる 声も引きずって
耳だったところ、爪だったところ、肝臓だったところ
ところどころにみえている
肌 ....
そうしてわたしたちは眠りについた
朝、
無遠慮にかたちを引きずりだす光にまみれながら
疲れきって でも
ほっとして
役目を終えた靴のように萎びて
群れからはずれた ひつじがいっぴき
光に打たれて たっている
かなしいでも
誇らしいでもなく
ひつじがひとり たっている
まるく くらい 影をおとして
ひかりがひつじを 打っている
....
おおきな鉄の
かばんは
おもい
かばんのなかには
かばんのかたちの
空間が
ひとつはいって
いる
よってたかって
見つめられた
少女や
きれいに
彫られた蝶などが
ま ....
すぐに壊れてしまう街をつみあげて
あたらしい街を構えるが
それもまたすぐに壊れてしまう
人のいないすがすがしい街が好きだから仕方ない
罪のない言葉で誘ったので
言葉は罪だらけになって ....
右手を動かして
左手を動かして
心を動かさない
息をしている
つめたい夜だ
わたしがいて
あなたがいない
壁のない部屋で
月はかたまる
つめたい夜だ
身体を横たえて
....
奥行のない思い出が
照らされてみじめにめだっている
逃げても逃がしてもはりつく影のために
やさしくなろうとした
それは
咲く花を手折るようなやさしさで
正しいかどうか問うあいだに
花 ....
いつかもここへ座って空気を吸っていた
ななめに流れる道路、さかりをすぎたさるすべり
ひらかれた場所に座ってみわたせば
蒸発するいくつもの過去
猫がならんで立っている
おまえはもう十六ではないのだよ、と
言ってくれるが
なんの救いにもならなかった
良いのかどうか
問いかける気持の裏がわで
浮かんでいるふたつのひざ小僧
がさがさで傷だらけでちいさくて口をつけたら割れそうだった
ママ
と言ったかどうかは
おぼえてない
言いたか ....
宝籤はもうすぐ二歳になる。相変わらず尻尾の先をわずかに白く染めているかわいい黒犬。でも、もう自分の手足を持てあましたようなちぐはぐな動きは消えてしまった。暑い日、賢い番犬よろしくブロックのうえに身 ....
ひと息ごとにこぼれるのをあつめて結いあげたのが
いまあなたの胸にひかっている涙です
気がつかなかった
愛がどれほどのものか
おわってみてようやく眺めることができた
一連を終えて
....
絶対に汚れない脂がありますか?昨日わたしは夢を洗いました。重なる木箱と転校生の匂い。わたしはつねにわたしではありません。(過去ではそうだった)血のにおいに負けました、そのボールは満たされているんだ ....
与えられた絵具の
いちばん暗い所を指さして
言われたことが
愛でした
あんなにためらいなく混ざりあったから
すっかり忘れていたけれど
紫は
海と血で出来ている
ずい分時間が ....
だが それは
扉から入ってくるとは限らない
ノックもしない
都会にもダイバーがたくさんいる
海べのようなプラットホームに
打ち寄せる通勤電車に
開けられた窓とか
流行のスナッ ....
月はくだけて 花火のようだ
瓶詰の感動を 2ダース買う
予定のない日 自動車を運転して 精神科へ
背の低い医者に ばかでかい椅子のうえから
大丈夫ですよ と言ってもらうために
大丈夫 ....
あなたの黒い長い髪がうたうたび
わたしの胸はいちいちこまかく傷つきました
海岸のガラスみたいになめらかにちいさくなっていくわたしを
拾いあげて陽に透かして
その美しい呼吸を一瞬でも止め ....
一滴のくらやみが 明るみに落ちたとき
わたしは黙っていてもわたしでした
愛などのことばも必要なしに
光を一粒あなたがとってみせたとき
はずかしく右往左往にばらけるわたしを
つぎはぎの ....
しびれるように今日は
明日を失い
昨日を失い
昼夜を失った
羊の目をもつ鳥が落ち
布を裂く音が縦に響き
誰かは誰かを失った
ぎりぎりの分別に
長くのばした爪を引っ掛けて
....
こわくない
冬なので
こわくない
ビタミン剤あるから
ぜんぜんこわくない
花柄の靴したを
いつもばかにされても
構わないで履きつづけていた
ななちゃんは9歳だったのに
勇敢だ ....
ひとを好きになって
はずかしかった
目も口も鼻も手足も
はずかしかった
話すことも黙ることも
さわってもさわられても
泣きたかった
赤くて青くて
欲しかった
あふれるまぎわの気持 ....
よごれて
あなたは笑っていた
ちかちかする電灯をつけて
陽気な詩を読んでいた
「星がながれるころ」、
歌いだしたとき
詩だと思っていた
( )を忘れたい
ほとんど白い ....
角のまるい三角をつみあげる
角砂糖のような几帳面さであなたは
猫も飼わなかったし
お揃いの刺青も彫らなかったね
あなたはもう
しらない人になった
前髪をきれいに切りそろえて
あなたはそれから日記を書かなくなって、たぶん唇はかわいている。
テレビは消音のまま点けっぱなしになっているから、部屋のなかの光と音のバランスは悪い。視覚的な喧噪と、それを拒否する沈黙。でもカーテ ....
寝息もかたちを持つ生々しい夜に
生きていることははずかしかった
熱と湿りを帯びるからだが
その振動や重みが
やがて夜の裾がめくれはじめ
青と赤が互いを超える
はじまりとおわりを混ぜ ....
夜、檸檬は乾いた
ソーダはふにゃふにゃにすきとおって
青ごしに見た君は
僕のかたちにくり抜かれている
夜が
街のかたちに染まるように
いったいどれくらいのなみだが流れたろう
街角 ....
バニラはひとりでひびわれて
かわいた白い絵の具に似てる
さようならをするときに
呼んでほしい名前があった
この世に難しいことなんてひとつもなかった
手に入れたいものもひとつもなかった
....
愛が理由にならない最終バスのなか
女と男は指を繋いで
まっさらな舟を編むような気持でいた
ここには何もないのに
海を
みたこともないのに
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