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サラリーマンが命を担保に金を借り
建てた家々の集落
書割のような中流階級
文化を支えたピアノ

音の断片が集落の中を
誇らしげに 恥ずかしげに
歩いていたのは何時のころだったか

口 ....
夏でも冬でも昼飯はこれが良い
薬味ネギに
わさびを効かせた付け汁で泳がせ
一気にすすり込む

長く伸びたまま食道を抜けることなど
所詮無理な話 かたまって
食道の途中で速度を緩めた
 ....
どうして
アスファルトで覆ったのでしょう
芽生えようとしていた希望が
誰にも知られず
死んでしてしまったら 
訪れた春は悲しむでしょうに
切り裂かれた皮膚から
去っていった細胞が
シクシク泣いている

あの日開いた傷口は
新しく育った細胞にふさがれて
戻る場所はもうない
無影灯の下で
 (あるいは 河原で 砂漠で)
鶯色の神々にかこまれ
 (あるいは 烏色の悪魔に)
無防備に横たわる

切り裂かれる皮膚
晒し出される内臓
 (生きものの命を掴んだ少 ....
過去は霞みに沈んで
昨日しか見えないけれど

未来はもっと見えない
目前に現れ始めて気がつく
それが昨日用意されていた
としても

交わらない直線が
全て平行などとは思わないが
平 ....
西の山に陽が近づいて
1日が終わろうとしていた
男は川面すれすれに延ばしていた竿をあげ
帰り支度を始めた
ゴカイを川に返し 椅子をたたむ
通りがかりの人が声を掛ける
 「連れましたかね」
 ....
   賽の河原にて

幼児の地獄 賽の河原で鬼がぼやく
この頃河原に来る幼児の数が減って
たまに来ても 石積み遊びを知らない 
石投げばかりしていて危なくて近寄られせん
ケルンつくってみせ ....
光がどんなに早くたって
地球を廻ることはありません

もし一秒に7回半も地球を廻ったら
ぼくの陰はずーっと伸びて
延びて のびて 
ぼくに後ろから覆い被さり
また延びて 延びて のびて
 ....
日本にはね
本当の荒れ地も 砂漠もないんだよ
確かに 
火山の荒れたガレ場や 海浜の砂丘は
あるけれど
それは 緑豊かな大地のツマ
それがあって
それも含めて
大地は一層美しくなる
 ....
人には全裸になっても
見えない部分があります
隠しているわけではありません

母は江戸と背中を見て死にたい
と言っていました
  その頃 
  江戸はもうありませんでしたけれど
  背 ....
ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは

向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹 ....
カモの群がる池の畔
桜花映える日差しに包まれ
川鵜と小白鷺が向き合っている

川鵜
  すっかり春だねえ
  これから北へ帰るのか

小白鷺
  いや まだ田に水が入っていないので
 ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に ....
七月のある日 兄は ぼくを呼んだ
風通しの良い部屋に一人伏せていた兄は
「今度は帰れないかも知れない」という
「弱気なことを…」
ぼくはそう言ったきり次の言葉が出ない

幼少時父も母も病で ....
若者が過去を振り返るのは
夢を実現するため
老人が過去を振り返るのは
夢を楽しむため
でも 
若かった過去へは行けません

***

別れるまで一度も名を呼ばれなかったからっ ....
平和3

手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない

人は闘争に美を見つける
   ....
見たか?

見た見た!

聞いたか?

聞いた聞いた!

それで どう思う?

ま ここは
見なっかったこと 
聞かなかったことにして…
灯火管制の都会の底では
光を漁って深海魚が徘徊している

魚卵たちの夢は皆カーキ色をおびて
時折光る虹色の粒は
懐疑が延ばす触手に喰われ
光彩を失う
幼魚は皆同じ方向を見てかたまり
群 ....
川を越え海を越えた向こう岸へなど
渡ることは考えもしないけれど
対岸に上がった火の手を見付けて
騒いでいる  
  ディスプレイの中で
  銃を構えてうろつく男を眺め
  騒いでいる
 ....
   迷刀スパイ

ぼくが国民学校に通っていたころ
鉛筆削りや竹細工には
折りたたみナイフ「肥後守」を使っていた
喧嘩のときも肥後守をちらつかせれば相手はひるんだ

その頃
日本では本 ....
ふんわり膨らんで
適度な蓄熱の布団
気分よく寝過ごし
急いで冷たく硬い空気のなかへ
緩んだ身体を放り出し
冷えた下着に包み込んで始まった朝

雨戸を開けると
微かな野焼きの臭いが漂って ....
きみが奥さんを残して
年の瀬も押し迫った雪の日に
ひとり先に逝ってしまったと
知ったのは娘さんからのメール

一昨年の夏 
共通の友の斎場で会ったときには
「お互いいい年だから葬儀には来 ....
子どもの頃
お天道様は何時もぼくの行為を
見張っていた

そして
お天道様は意地悪だった
自転車の二人乗りをしていると
石ころを置いて ハンドルを揺らし
転倒させるのだ
倒れながらち ....
前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で 
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ 
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなた ....
    ゴマフアザラシなど
    北の海ではひょこひょこと
    モグラ叩きのように頭を出し
    珍しくもないけれど…

その目は カメラを見つめていた
水面から顔を出し 身動きせ ....
友といさかい冷えた心で乗った電車
開いたドアからはいりこんだ冬の風が
通り抜けていく

二・三歳の男の子を連れた若い女が
隣にすわり 子を膝に乗せる

子の足がずれて
座席のあかいビロ ....
陽の当たらない玄関の
下駄箱の上に置かれたガラスの水槽
その中に金魚が一匹 

夏の宵
太鼓の音や提灯に囲まれた広場の
入り口で掬い取られて 
運ばれてきた

  たくさんの兄弟と泳 ....
人生に設定した目的に向け 
一直線に生きていける人はあるまい
散歩先に目的地を設定しても
一直線に歩いて行くことはない

前方の橋
大型犬を連れた女性がこちらに来る
わたしは 当然の ....
ぼくの中に少年のぼくがいて
ぼくの中をぼくが歩いている
ぼくの中を少女が歩いていて
ぼくの中を
何人ものぼくが歩いている

ぼくの中をあなたが歩いている
あなたは背を向け
ぼくの中でち ....
夏美かをるさんのイナエさんおすすめリスト(242)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ピアノの去った日に- イナエ自由詩16*15-3-13
年を取るとはこういうことかーざるそばー- イナエ自由詩15*15-3-10
舗装農道- イナエ自由詩13*15-3-7
傷跡の痛むときに- イナエ自由詩16*15-3-5
幻死_- イナエ自由詩8*15-3-3
近視- イナエ自由詩11*15-2-23
平和を釣る- イナエ自由詩16*15-2-20
楽しい空想ー地獄事情ー- イナエ自由詩10*15-2-19
楽しい空想ー光ー- イナエ自由詩9*15-2-18
あなたを見ている人はいる- イナエ自由詩8*15-2-14
裸になっても- イナエ自由詩8*15-2-14
ささやかな冒険心- イナエ自由詩8*15-2-10
春日一刻- イナエ自由詩7*15-2-8
月の光が降り積む夜は- イナエ自由詩11*15-2-6
寒い夏- イナエ自由詩22*15-2-2
歳を取ったと気付かないあなたへ- イナエ自由詩9*15-1-31
平和_その三- イナエ自由詩12*15-1-28
日光三猿- イナエ自由詩10*15-1-21
暗い虹- イナエ自由詩13*15-1-17
対岸にいて- イナエ自由詩10*15-1-9
言葉の切れ味2_迷刀たち- イナエ自由詩14*15-1-7
打ち直した布団と雨- イナエ自由詩5*15-1-6
慌て者- イナエ自由詩10*15-1-1
神の誕生1お天道様- イナエ自由詩5*15-1-1
あなたは…- イナエ自由詩12*14-12-25
アザラシ君のオモテナシ_ー旭山動物園ー- イナエ自由詩6*14-12-22
母の胸- イナエ自由詩13*14-12-20
冬の金魚- イナエ自由詩16*14-12-15
橋・渡らない- イナエ自由詩10*14-12-2
心象__- イナエ自由詩18*14-11-26

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