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秋の夕暮れ
床に漂う冷気に足を漬け
おとこひとりタマネギを剥く

まな板に乗せ 包丁を持ち
玉ねぎの白い肌が 
病床の妻に重なって
ためらったおとこから
逃げたタマネギ

床から拾 ....
あなたが風変わりな人と知ったのは
新緑の上野動物園の入り口で
二時間後にここに集合という言葉を聞いて
会社の人らと別れて一人
不忍池方面へ消えたときのこと

みんなで群れておしゃべりしなが ....
コンクリ-トの囲いとか
有刺鉄線のバリケードとか
があるのではない
ガラスのドアが閉じているだけ
外からは自由に開く自動ドア
それでも内からは
鍵が掛けてあって開かない

食事は確 ....
あの朝 若い担任は 粗暴で担任泣かせの君が書いたという「ひとりぼっちのクリスマス」を校長に見せた。感動した校長は涙ぐみ集会で紹介していた。だが この話には君ではない原作者がいた。
母子家庭の少なくな ....
 
 「好きな娘」
漢字を造った人は
女ぎらいか ロリコンだったか
女の子と娘のほかは
 妖 妨 嫌 姑 㛏 娭…
どれもこれも うざい字だ


  「結 ....
早朝 
寝ぼけ顔で庭に降り
如雨露を取りに飛び石伝いにゆけば
いきなり顔面を覆う蜘蛛の糸

悲鳴こそ上げなかったものの
粘っこく絡みつく網に息を止め
指を立て取り払ても 
容易には剥が ....
長い間育った母の胎内から
外にでいたあなたの前には
無限の白紙が広がり
あなたの人生が始まりました

あなたを記した最初の文字は
  二〇一三年 誕生  男 
  血液型 A型 RH+
 ....
結婚してからも二人は別々の道を歩いた
二人の間が広がっていったとしても
二人は詰めようともしなかった

二人の間に他人が入ったとしても
二人の間を埋めることも
ひろげることもできなかった
 ....
人が交差する地下街
人形売り場の前の通路に
子どもの泣き叫ぶ声がわき
困惑ししかりつける若い母親
微笑んで通り過ぎる年配の夫婦
遠い日のにがい記憶がよみがえる

 鄙びたドリーラ ....
近所に温泉があって
泥水のように濁った湯と
青みがかった透明な湯と

泥んこ温泉はホントに温泉らしくて
透明温泉は井戸水お風呂のようで
でもどちらも温泉

晴れた朝の風景を
 ....
原色の風景が
真夏の陽光に
溶ける午後

愛の幻想に
溺れる男は
実像を求めて
海に潜る

捕らえた肉体の
乳房は溶けて
流れ去る

時を
遡行する男の
前をゆく実像は
 ....
軍艦を持っていようと
戦闘機を持っていようと
ミサイルをもっていようと

外国に戦を仕掛けず
外国を攻撃せず
腹の立つことも我慢して

バーチャルゲームで
破壊し殺し

世界の平 ....
「男女七歳にして 席 同じゅうすべからず」この精神に則って 国民学校と呼ばれていた現小学校の三年生からは男女別学になった。担任も女先生から 自らを在郷軍人と名乗って憚らなかい男先生になった。新学期にな .... 秋の中国地方を巡るツアーバスが
平和公園に着いたとき 記念館から 
修学旅行生の一団が出てきた
入れ替わりにはいった私たちが
今日最後の客になった

平和記念館を出ると
秋の陽はすでに落 ....
風が吹けば
裏返り 寝返る
白と黒 
どちらも表で
どちらも裏で

裏の中に表が潜み
はっきりさせないことが
生きる術
だというけれど
白 黒 × ○
二者択一を迫られる
意思 ....
サッシュの窓といえども二十年もすれば、ひずみも出るし、隙間も出来る。
夫婦の間にもずれや、隙間ができる。
若い頃は埋めようと色々と努力して、かえって息苦しくなった。
年経て、諦めたのか、ゆとりが ....
 
路地裏を通り抜ける豆腐屋のラッパは
夕暮れによくにあう

かくれんぼの時間が削り取られて
ひとり帰り ふたり帰り 
隠れたまま鬼から取り残さて
気がつけば夕闇につかまっていた
どこ ....
  視界の開けた農道の十字路で
  車同士が衝突する死亡事故が
  今年二件も起きた

屋根の上の仕事師は言う

屋根の上が安全です
棟は細くておっかないって?
歩く足の幅が有れば十分 ....
                 
体の中を這い回るヤスデのような生き物と
近くを流れる水の気配に目覚める

が 眼は閉じたまま
それでも見える 
隣のテントから覗く逆三角形の顔
とがっ ....
夏の庭には自然が蔓延る
カマキリが三角頭をかしげ
雑草が繁茂して人間の通り道をふさぐ
その葉裏からわき出る蚊 這い出すヤスデ
ときには蜂が茂みに浮かぶ花を尋ねて
低く飛行する

手入れし ....
   
生まれてからぼくは
姿のあるものに名札をつけてきた

手に触れるものや 目に見えるもの
目に見えない小さなものにも
ぼくの周りの森羅 ....
かつて 人は 
真夜中に天井裏をばたばた走る音に目覚めても
ネズミだと知れば安心して眠った

 家で餅をついていたころ
 鏡餅を刻んで 部屋に広げた
 子どものおやつを作るために…
 だ ....
吊り橋の真ん中で二人は懐中電灯を消した
月も山の木立に光を隠した

手を延ばせばそこには異性がいた
何時も顔を合わせている相手だったが

不意に訪れた二人だけの世界に戸惑って
互いに黙っ ....
目覚めはじめた街の夜を 置き去りにして
東京発二〇時三〇分 のぞみに乗り込む

この列車に乗って人はどんな望みを持つのだろう
あるいは捨てたのだろう

 夜と昼の混濁したこの街は わたしに ....
月はね 二つあるのだよ 
望遠鏡から離れて 自分の目で見てごらん
三日月の尖ったあごは二つに分かれているだろ
昔の人が見た乙女や兎が住んでいる月
今見る乾いた月の後ろに少しずれて
ぼくに ....
アメリカ帰りの若い女教師はあきれたように言った
「水族館の水槽を見ていた若いお母さんがね 
 幼稚園児くらいの子に言ったの
 あのマグロ美味しそうだねって
「ぼくだって水槽の鯛や海老を旨そうだ ....
古いアルバムをひろげ
遠い国の人を見つめるように
父や母の写真を
一枚いちまい確かめている妹よ
おまえを世に残して消えてしまった母の
記憶がないからと言って嘆かないでくれ

 ぼくの ....
タンスの上置き 小引き出しの奥深く
潜められていた桐の小箱
黒ずんだ表面に彼の名が沈んでいた

初めて見る彼自身の臍の緒(へそのお)
波立つ胸を押さえ 箱を開く

 母はこの管を通して
 ....
                     
 
ひんやりした部屋の鴨居(かもい)
黒い額縁の若い女に寄り添った老人
の真新しい写真に目をやり
タンスの引き出しを開ける
引き出しいっぱいに満 ....
陸に上がることなど望んでいなかった
沖から寄せる波に乗せられたのだ
いつになったら戻れるのか
オットセイだったら良かったのに
だが人の助けが無くては水の上でも
自由には動けない
ましてや陸 ....
夏美かをるさんのイナエさんおすすめリスト(242)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
玉ねぎの涙- イナエ自由詩10*13-11-2
あなたの不安- イナエ自由詩6*13-10-31
塀の中- イナエ自由詩10+*13-10-28
Kよ…- イナエ自由詩9*13-10-23
観字雑想・抄- イナエ自由詩15*13-10-19
ジョロウグモ- イナエ自由詩9*13-10-13
命名- イナエ自由詩12*13-10-7
夫婦- イナエ自由詩10*13-9-26
幼児の友情- イナエ自由詩6*13-9-26
温泉水と詩- イナエ自由詩6*13-9-10
欲望- イナエ自由詩8*13-8-25
今、日本が平和であるとすれば- イナエ自由詩9*13-8-20
フクロウと呼ばれた少年- イナエ自由詩7*13-8-14
八月六日の影- イナエ自由詩16*13-8-6
オセロ- イナエ自由詩12*13-7-19
隙間- イナエ自由詩8*13-6-30
日暮れ刻- イナエ自由詩25*13-6-27
安全地帯- イナエ自由詩10*13-6-10
病床で- イナエ自由詩5*13-6-6
挽歌- イナエ自由詩7*13-5-31
消えた名前- イナエ自由詩5*13-5-29
ハツカネズミ- イナエ自由詩6*13-5-25
吊り橋- イナエ自由詩11*13-5-18
- イナエ自由詩6*13-5-13
- イナエ自由詩8*13-5-13
水槽の魚は美味しそう- イナエ自由詩9*13-5-4
儀式番外_父の忌明けに- イナエ自由詩6*13-5-1
儀式4_転生- イナエ自由詩7*13-5-1
儀式3_追葬- イナエ自由詩6*13-5-1
陸に上がった船- イナエ自由詩12*13-3-10

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