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昏い海の波間で
人魚にもなれなかった
青白き亡霊たちは
海よりも深い森のなか
銀竜草の霧のなか
木漏れ日のような朝露から
こぼれ落ちたのだ
月の投げた銀の網が
のたり、と揺れて ....
「合掌」
時が合掌すると
測りがたき遠方の地平は白む。
赫きは天から天へ、
高く響きあふ鐘の音色。
この果てのない寺院に
しかし動くものはなにひとつない。
「透明 ....
この花は永劫の畔にゆれている。
あまたのうつろいをながめ
蕾という名の一輪となって。
風よりもとうめいなあなたの声が、
水面をやわくなでている。
どことも知れずに吹いてきては。
....
まぼろしである
しとどに濡れる街が
明滅する赤信号が
交差点にあふれた人びとが
舗装された道路の窪みが
まぼろしである
底のすりへった靴が
歩道橋の一段目が
つらなった改札の狭 ....