ひび割れた岩の目が
波に降る花を見つめている
鳥の翼の生えた草を
銀の署名とともにつかむ手
燃えつきることなく火のなかにある
明かりの下で器をかたむけ
草を焼いた粉を見つめ ....
益野大成さん「飛ぶ」に寄せて
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=42285
空を飛ぶ夢を見たことがあると思う。
「飛ぶ」という身体感覚を ....
夏の幻に消えいりそうな呼吸音
いますこし
いますこし失うものは
命のみほかはぜんぶ
あげる
あげる過去の熱
無重力する
肺をこげつかせる
ゆううつな吐露
だすあてのない
手紙机 ....
数えきれないほど多くの
手首のかたちをした炎が
夜の空をまわりつづける
見える夜 見えない夜を
讃えつづける
原を越える雨
石の絵文字に咲く花
森をまとった遺跡の ....
肩まで のびた髪を
指で とかすと
しずかな 波 の音が する
黒い
隙間 に
あお しろく
ほどけた 心は
ちいさな蝶
のぼり
はためく
海へ
....
内側から鍵をかけ
それでも
飽き足らず
爪が白くなるまで
ドアを押さえていたね
梅雨目前の
予行練習の小雨にでも
混じってくれと願った
指先の震えが
どうしてか
あなたの仮 ....
思いがけず
可笑しさがこみあげて
くるが
すぐに冷め
可能性の欠落を夢みる鋭さ
鮮やかな月に照らされて
{ルビ青灰色=せいかいしょく}の肌は
淡く
光合成を告白するが
しおりは空 ....
航海記。鼻息を荒げた 鉄仮面をかぶる男が
捕まえた猿達に首輪をつけている。
サーカスの夜、団長は無邪気な子供たちだけを
テントに招き入れた。
その中から 笑い声よりも大きな
足を踏 ....
渦巻くのは散々だ。ひとつ通り越せば円形の日々がまたたく前に振り落ちてくる。ゴーイング午後。そしてその先から、定規で引いたような白線が舞い上がり、先走る道をただただたどたどし、く、たどり。ただその、嘘。 ....
自由を求めてフロンティアを手にして、
不自由を嘆いてフロンティアを吐き出した。
肌を突き刺す風に
たまらず上がる水蒸気
明日には霧になるでしょう
そんな湖面に私は
足を踏み入れ波を立てる
私を照らすその月は銀色に光って
見て、あなたに映えるように
白い薄いワンピ ....
白から白へと響きわたり
限りあるかたちに届くのは
ほんのわずかしか続かない
どこにでもある小さな高まり
次々とほどける空気の結び目
とめどなくひろがるひろがりの
三つの遠い華や ....
平坦な場所
何も いない
みていた空
置いてきぼり
かかわる 擦り傷
ぺろりと なめ
居場所は
歩いたっきり
ひきさく 日常の中
道なりの 花 乞い
....
街は、宣伝する車の謳い文句と、気にも止めない通行人を生贄にして
せり上がる暑さよりも、乾いた空虚さを従えていたので
僕等は、長い橋の上からきらめく水面を眺めている。
そこにありもしない目印を探し ....
失われた約束が
気づかぬうちにふたたびつらなり
忘れられたはじまりを
さざめくように呼び覚ます
降り積もるなか見えてくるもの
わたしを明るくかきむしるもの
願いを終えた ....
同じ過ちは繰り返したくない
後悔はしたくないが学びたい
次の一歩は踏み出せると信じたい
けれど躓くことにもビビりたくない
出来れば前を向きたい
時には足元を確認したい
....
駅のホーム隅のいつも同じ場所に
仙人のような老人が
生きているのか死んでいるのか
疑問に思わせるくらい微動だにせず眠っている
ニュースで流れている
数字だけで表される悲しみは
....
海に近い砂の丘から
無数の骨が突き出している
かつてここで倒れた巨大な生き物の上に
浪に運ばれたものが積み重なり
石でできた枯れ木のような
蒼白い骨の森を造った
海からの風に ....
ああ
はぐれていこう
ああ
わたしはここにいる
ああ
雨の日に傘はいらない
私は涙
ああ
晴れの日はアスファルト
太陽よりも熱く
燃えてしまえ
あああー
....
暮れそうで暮れない夜を抱えて
西の空は橙色の熱さを振り絞る
雲はたそがれいろに染まらずに
うっすらとはい色のヴェールで
どこかに逃れるのを阻んでいる
境界線を緩め昼と変わ ....
私の葬式がささやかに執り行われ
友人らが久しぶりに集まった
青空には透明な道が果てしなく続き
新緑に人々の喪服が映えて美しかった
一滴の涙も流されず むしろ
想い出を懐かしむ声で
小さな式 ....
それを少女は
みなに内緒にして
草むらのなかを
さがしていたんだ
川につらなる
あたらしい蜘蛛たちは
糸に針とえさをつけて
釣りをしていたり
雲のなかでは
ニンジンをぶら ....
ムイテモ
ムイテモ
薄皮の内に私が笑う
ステテモ
ステテモ
捨てているのはやはり私だ
美しく
咲くやもしれぬ蕾を千切り
残酷な子供がするように
一枚 一枚
私を剥いて捨てた ....
知らないホテルの片隅で、
丸くくるまって君の寝顔を見てる。
ひとりでは眠れないというから、
毎晩、君が寝付くまで色んな事を話す。
あの鮮やかな初夏の想い出を、君 ....
窓から窓のかたちの風が来て
わたしの前に箱をつくり
ゆうるりゆうるりまわりながら
冷たい心のありかを示す
あたたかな胸とあたたかな声が
わたしのまわりに円を描く
今は静 ....
ひがしのそらに 夕焼けをみた
まぼろしだよ、と
ひとは笑う
からんと音をたてて
百円玉が落ちた
ころころところがって
排水溝に飛び込んだ
現実と、そうでないもの
境界は気付いた ....
廃墟で美しい女が窓を拭いている。
手にしていたのはハンカチか、雑巾か、どちらにしろ
窓のガラスは全部割れていた。
柱の陰から鼠が、いつかいつかと
女を驚かす機会を伺っていた。が、それは無駄だ ....
お嬢の小唄を
宙に放れば
おてんと様が照らしてくれる
小僧の小唄を
地に撞けば
根っこの隅々しらべてくれる
手毬唄、ひとつ
この手に優しい
中身かどうか
優しくこの手に帰 ....
情=なさけとは
違うのだよと
言ってやりたいのです
愛情=愛のなさけとは
違う受け止め方ができるように
情愛と書けば
更に愛は深まると言うのに
あなたは少し
情という言葉の ....
病めるものたちが
殺めるものたちが
羽の手に触れようとやってくる
細く赤い髪の毛が
かすかに肩を撫でている
ひろげたふたつの腕のなかには
目を閉じた笑みが咲いている
ほとば ....
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