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僕の部屋の片隅に
久しく再会した
幼稚園の頃の先生が呉れた
ご主人の形見の下駄が
置いてある

夜の部屋で、ひとり
黒い鼻緒の下駄を見ていると
あの大きな背中と共に
からん、ころん、 ....
白髪の師は
開いたドアに凭れて
私を待っている

次に私が
ドアを抑えて
青年を待っている

ほんとうのことはそうして
語り継がれてゆくだろう

ドアを抑えて立つ、私の傍らを
 ....
あの紅葉に燃える木の下にいってみよう 
あのみどり深い木の下にいってみよう 
あの石橋の向こうの赤い屋根の家の窓から
ひょいと顔を出して、世界を眺めてみよう  
戻ってきたら、石橋の(絵の中心 ....
誰かを大切に思う時 
心の家に住まう 
何者かの気配を感ずる 






 
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
家に帰って、腰を下ろし 
一才の周をだっこすれば 
小さいいのちの温もりが 
このお腹にあったかい 

この両手を 
短い足の膝下に組んで 
右に左に、ゆさり、ゆさり 

パパは君の ....
恩師のY先生は 
僕が被災地の石巻へ旅に出る時 
ポルトガル料理とポートワインに酔い 
ほてった頬で突っ立つ僕を 
店の出口まで見送り

その日の遠藤文学講座で
僕の詩集が何冊か売れたお ....
人は皆いつか「自分」という
透けた衣服を、脱いでゆく 

その日まで誰もが人という 
何処かが欠けた、器です。  

(器にはゆるしという
 {ルビ一滴=いってき}の水が響く  ) 
 ....
愛する{ルビ女=ひと}と結ばれる前 
この手は一度、天にあずけた 

働く場所が決まる前 
この手は一度、天にあずけた 

これから家族3人で 
叶えるたった一つの夢の為に 
妻のぬく ....
お正月に風呂屋へ行き 
入口でもらったサービスの甘酒を手に 
目に入った「足湯」に 
ズボンをまくって、足を浸す 

紙コップから{ルビ一滴=いってき}の甘酒がこぼれ 
お湯が一瞬、白く濁 ....
一年の仕事を終えて 
家に帰った年の瀬の夜 

テレビで久しぶりに 
「ガソリン値下げ」のニュースを見て 
はじめて(嬉しい)と思う自分に少し驚く 

僕の顔に似た赤ちゃんを 
今夜も ....
何もない所に
一つのドアと
見知らぬ場所へ昇ってゆく
階段があった

昔見た夢で
ドアの向こうの階段に
どう抗っても行けない所で
ぱっと目が覚めたが

僕はこれまでの生の歩みで ....
職場で調子が出なかった日 
凹んだまま布団に包まり、さっさと寝た。 

目が覚めて、妻が見ていた 
朝のニュースは 
{ルビ白鳥=スワン}の舞を
世を去った母に捧げる浅田真央 

場内 ....
日常に潜む「?」という文字から 
背を向けてないか? 
逃げようとしていないか? 

いつからか、目の前に 
私と等身大の氷塊が、ある。 
足元に一本の斧が、置かれている。 

目を凝 ....
ほんとうの深呼吸をしよう 
北国を旅した時に泊まった宿で 
火鉢の前で両手を暖めるひと時のように 

ほんとうの手紙を書こう 
血の通わない文字のメールを
百通送信、するよりも 
旅の便 ....
渋谷のライブハウスgeeーgeに入ると 
唄歌いの君は 
カウンターで手づくりのおでんを 
皿に盛り、お客さんに手渡していた 

若い歌姫が「涙そうそう」を歌い 
チャイナ服のバンドの「モ ....
上野の美術館内で 
ガラスの内側に坐る法然上人は 
時を越えて歩いて来た 
旅人の私を待っていた 

少し猫背に身を屈め 
指のすき間から数珠を垂らし 

700年前に描かれた 
色 ....
都会には「タテマエ」と書かれた 
大きい看板に、ひとりの顔が 
ニッコリ営業スマイルをする 

そんな看板の全てを引っ剥がした 
後に残る
(ほんとうの顔)と 
一度、ゆっくり話してみた ....
金曜の休みに出かけた日 
終電に近い電車で帰ったら 
くたびれ果てたいくつもの寝顔が 
ネクタイを緩めて、右に左に傾いていた 

サラリーマンの皆様の顔を見て 
(これがほんとの疲労だろう ....
まーつんさんの服部 剛さんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
下駄の音- 服部 剛自由詩9+18-3-22
風の通路- 服部 剛自由詩614-5-18
絵画の中を歩く_- 服部 剛自由詩10*13-6-5
霊の家_- 服部 剛自由詩313-5-23
なめくじ親父_- 服部 剛自由詩14+*13-2-19
あたらしい歌_- 服部 剛自由詩7*13-1-3
旅の始まり_- 服部 剛自由詩112-6-7
人の器_- 服部 剛自由詩7+12-1-7
明日のドア_- 服部 剛自由詩12*12-1-6
甘酒の味_- 服部 剛自由詩8*12-1-6
家族の船_- 服部 剛自由詩712-1-1
夢の階段_- 服部 剛自由詩7*11-12-31
妻のひとこと_- 服部 剛自由詩511-12-31
斧と氷塊_- 服部 剛自由詩311-12-20
絵手紙のこころ_- 服部 剛自由詩511-12-17
渋谷一軒屋の夜_- 服部 剛自由詩311-12-17
不思議な声ー法然と親鸞展にてー_- 服部 剛自由詩511-12-12
酒をつぐ_- 服部 剛自由詩311-12-10
東京動物園_- 服部 剛自由詩411-12-10

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