小宇宙から流れくる
木屋 亞万

十億光年の彼方から
飛来した一枚の花びら
一生をかけて旅しても
たどり着かない遠い星

送られてきた切れ込みの
入った桜の花弁から
感じる宇宙の拍動

地球は丸く
銀河は楕円
さらに包むは
名を持たぬ
直方体の無物質

これから来るのは花の世紀
哺乳類も恐竜も
悉く皆ほろびた星に
季節ごとにふぶく花びら
舞い飛ぶ花粉
生きる物のあらゆる粘膜を侵食し
平穏に火をつけ炎上させる

花というエイリアン
小宇宙を旅して
彼らが降り立った星は
ことごとく華やかに滅びた
蔦が這い
茎が伸び
花が咲き
甘く実る
芳しい匂いに包まれて
枯葉が土を肥沃にする

聴くもののいない森の奥で
花は静かに歌うのだ
小鳥が蜜をついばめば
密約どおりに恋人の
ところへ鳥は飛べないけれど
打ち落とすものの消えた世界で
鳥と花びらが謳歌する
大空を浮く雲
水滴をその身に浴びて
銀河を飛ぶほとんどの彗星が
花に包まれて
摩擦で燃えては
新芽が萌えて
小宇宙は今日も
楕円の花となるのだろう


自由詩 小宇宙から流れくる Copyright 木屋 亞万 2013-03-09 13:55:56
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