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盤面に行儀良く並んだ歩兵
敵の攻撃を真っ先に受け将を守る
時には味方にも無視され
時には邪魔もの扱いされる歩兵
敵陣深く突入して将となるも
あっさり討ち死に
そして 次には
味方だった将 ....
ビルが朝陽にかじられて
吐き出された陽光は窓をすり抜け
昨夜の恥部を暴き出す

人々は慌ててカーテンを閉じ
ベッドを隠し
朝を始める

わたしと来たら
病室のカーテンを開け放ち
 ....
玩具売り場の前から幼児の泣き声が
人の溢れた地下街広場に響いて
若い夫婦の困惑が子供を叱る

幼児と親と対立する主張は
地下街の雑踏を立ち止まらせ 
黙らせる

  己の主張が通らない ....
桜の花に誘われて散歩するわたしの行く手の
立ち枯れた葦の叢から飛びだした番い  
ギャッと鳴いて 慌てふためき 灌木の陰に潜る雉子
間違えはしない
登校した私を小学校の玄関で
毎朝迎えて ....
こたつと蜜柑の季節が終わって
それでも フッと食べたくなる蜜柑
蜜柑産地のJAで赤い網袋に入って
300円の値札を付けて並んでいる
{ルビ寒=かん}の間{ルビ室=むろ}に貯蔵されていたものだ
 ....
その男は 
幾つも電球を並べた灯りの下で
ぼくの胸を切り開き不機嫌な心臓を取り出した
心臓の中に豚を入れ調子よく動かそうというのだ
更に男は心臓のあった空洞を覗き込み
ぼくさえ知らない潜み物 ....
夕焼けがビルの窓から覗く頃
わたしの時間が始まる

昼間着ていたスーツを脱ぎ捨て
わたしを取り出して
カフェの片隅に
あるいは
居酒屋の椅子に乗せる
空き瓶収集所まで行く途中に
今年始めてみたカエルは仰向け
四肢を広げて道の真ん中に一匹 
こちらの路肩とあちらの路肩にも一匹と
まだ冬の残る雨に濡れている

暖かい日が二・三日続いて
冬 ....
サラリーマンが命を担保に金を借り
建てた家々の集落
書割のような中流階級
文化を支えたピアノ

音の断片が集落の中を
誇らしげに 恥ずかしげに
歩いていたのは何時のころだったか

口 ....
夏でも冬でも昼飯はこれが良い
薬味ネギに
わさびを効かせた付け汁で泳がせ
一気にすすり込む

長く伸びたまま食道を抜けることなど
所詮無理な話 かたまって
食道の途中で速度を緩めた
 ....
どうして
アスファルトで覆ったのでしょう
芽生えようとしていた希望が
誰にも知られず
死んでしてしまったら 
訪れた春は悲しむでしょうに
切り裂かれた皮膚から
去っていった細胞が
シクシク泣いている

あの日開いた傷口は
新しく育った細胞にふさがれて
戻る場所はもうない
過去は霞みに沈んで
昨日しか見えないけれど

未来はもっと見えない
目前に現れ始めて気がつく
それが昨日用意されていた
としても

交わらない直線が
全て平行などとは思わないが
平 ....
西の山に陽が近づいて
1日が終わろうとしていた
男は川面すれすれに延ばしていた竿をあげ
帰り支度を始めた
ゴカイを川に返し 椅子をたたむ
通りがかりの人が声を掛ける
 「連れましたかね」
 ....
   賽の河原にて

幼児の地獄 賽の河原で鬼がぼやく
この頃河原に来る幼児の数が減って
たまに来ても 石積み遊びを知らない 
石投げばかりしていて危なくて近寄られせん
ケルンつくってみせ ....
光がどんなに早くたって
地球を廻ることはありません

もし一秒に7回半も地球を廻ったら
ぼくの陰はずーっと伸びて
延びて のびて 
ぼくに後ろから覆い被さり
また延びて 延びて のびて
 ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に ....
平和3

手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない

人は闘争に美を見つける
   ....
灯火管制の都会の底では
光を漁って深海魚が徘徊している

魚卵たちの夢は皆カーキ色をおびて
時折光る虹色の粒は
懐疑が延ばす触手に喰われ
光彩を失う
幼魚は皆同じ方向を見てかたまり
群 ....
川を越え海を越えた向こう岸へなど
渡ることは考えもしないけれど
対岸に上がった火の手を見付けて
騒いでいる  
  ディスプレイの中で
  銃を構えてうろつく男を眺め
  騒いでいる
 ....
   迷刀スパイ

ぼくが国民学校に通っていたころ
鉛筆削りや竹細工には
折りたたみナイフ「肥後守」を使っていた
喧嘩のときも肥後守をちらつかせれば相手はひるんだ

その頃
日本では本 ....
前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で 
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ 
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなた ....
友といさかい冷えた心で乗った電車
開いたドアからはいりこんだ冬の風が
通り抜けていく

二・三歳の男の子を連れた若い女が
隣にすわり 子を膝に乗せる

子の足がずれて
座席のあかいビロ ....
箱の中に入っている人のこと
何も知らないのだがな 
どんな仕事していた人か 
どんな声で話す人か
葬式だから来いと言われてやってきたけれど
母の従兄弟と言われても 
母はとっくに死んで ....
壁に掛かった能面たちは
電灯に照らし出されると
生き返る

幼い子には
能面たちの話す声が聞こえるのか
じっと見つめ後ずさりする

激しい風雨の夜は
般若面が半開きの口の奥で
歯を ....
山を背にした集落の
家家の屋根から突き出た鐘楼ひとつ
奥の旅を終えた芭蕉も伊勢に下る船上で
この鐘の音を聞いただろうか

港のあったこの集落に都会の風が吹き込んで
集落を縫う曲がり ....
腹の中

むかし 
おふくろは言ったものだ
「おれの腹断ち割って見せたいものだ
 真っ白じゃで…」
そう あなたは 
腹に一物持つような了見など有りはしなかった

だが
子ども達は ....
 妖怪


都会の妖怪は
昼間に出るらしい
夜は明るくて
隠れる場所が無いから

たとえば
人の途絶えた午後
ビルの屋上に出るドアの
前に佇む影

あるいは
休日の事務室に ....
今日は可燃ゴミ収集日
ゆるゆるゴムのパンツを捨てる

魚肉の切れっ端や野菜葛の異臭にまみれたパンツ
カラス除けのネットを剥がし
顔色も変えずに集めてくれる若いあなたがいる

履き替える新 ....
じっと見つめる白いディスプレイ
画面の深淵に広がる混沌
ぼんやりとした影がふるえているのだが
コーヒーを一口 指先で机を叩き
たばこを一本 目を閉じ頭に爪を立て  
五分 十分・・・
一瞬 ....
そらの珊瑚さんのイナエさんおすすめリスト(143)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「歩」の少年- イナエ自由詩10*15-4-30
ビルが朝陽に囓られるとき- イナエ自由詩17*15-4-25
自己主張- イナエ自由詩16+*15-4-16
雉子- イナエ自由詩15*15-4-7
三月の蜜柑- イナエ自由詩15*15-4-1
開胸手術- イナエ自由詩17*15-3-29
夕焼け- イナエ自由詩7*15-3-25
カエル夭折- イナエ自由詩12*15-3-19
ピアノの去った日に- イナエ自由詩15*15-3-13
年を取るとはこういうことかーざるそばー- イナエ自由詩15*15-3-10
舗装農道- イナエ自由詩13*15-3-7
傷跡の痛むときに- イナエ自由詩16*15-3-5
近視- イナエ自由詩11*15-2-23
平和を釣る- イナエ自由詩16*15-2-20
楽しい空想ー地獄事情ー- イナエ自由詩10*15-2-19
楽しい空想ー光ー- イナエ自由詩9*15-2-18
月の光が降り積む夜は- イナエ自由詩11*15-2-6
平和_その三- イナエ自由詩12*15-1-28
暗い虹- イナエ自由詩13*15-1-17
対岸にいて- イナエ自由詩10*15-1-9
言葉の切れ味2_迷刀たち- イナエ自由詩14*15-1-7
あなたは…- イナエ自由詩12*14-12-25
母の胸- イナエ自由詩13*14-12-20
棚から…_- イナエ自由詩8*14-12-3
能面- イナエ自由詩11+*14-11-19
時の鐘スケッチ- イナエ自由詩14*14-11-13
腹の中- イナエ自由詩11*14-11-9
妖怪- イナエ自由詩15*14-11-4
パンツ来歴ーぼくらは人間1ー- イナエ自由詩6+*14-10-31
神様とぼく- イナエ自由詩16*14-10-23

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