すべてのおすすめ
それはひとが置いてきてしまったものへのノスタルジーのようなものだった
いや、ノスタルジーなどではなかった
ちがう世界の発展と調和に今を生きるぼくたちのこれからを重ねていたのだ
ひ ....
まだ若いからだの頃
営業車へともどる夜道に
清烈な花の香がした
まだ相俟みえぬあなたに
届けたくなっていた
僕だけのものにする為に
その小さな花々を毟り
車内にそれを舞い落とす
生ま ....
ベッドサイドの窓ガラスをふく
よくなれよくなれ、そう呟きながら
するとそれは突然
いつも綺麗な景色をありがとう、という呟きに変わっていた
と、その瞬間
まもってくださいまもってください、そん ....
日差しだけが強くて涼しげだった
まだ朝のような夕方
木々の緑は身を揺らせて
一日じゅう空は青のままだった
ぼくは泣きたいほど懐かしかった
ひかりがひかりだけになっていた
それいがい
僕等 ....
突然工場が爆発したり
突然歩行者に車が突っ込んできたり
時限爆弾のようなものでも
ぼくらの周りにはあるのだろうか
太陽の磁極が5月
四重になるのだという
こんな ....
智恵子は雨の日には地震が来ないという
昔なじみの校舎のような病院だった
伝言板には院長の行く先が告げられていた
カーテンをあけて雨の日を見つめる
さくら若葉のあいだに在るのは
昔なじみのきれ ....
飲んでいい牛乳なんてない
宝くじは空くじだ
ビンラディンはとっくの昔に死んでいた
年間自殺者なんか三万人もいない
地球温暖化なんて二酸化炭素と関係ない
みんな騙されるのが ....
高原に吹く風が
レーザービームみたいに
追憶に照射され
旅の終わりに描きかけた
一枚が完成する
白樺は動物の皮革のようだ
誰かの故郷が傷ついている
歌手が風邪をひけないのと
おなじく ....
仮面ライダーになりたかった
あのときぼくはまだ
仮面ライダーじゃなかったから
そのことばかり考えていた
三日月は満月になりたかった
ひとはみなしあわせになりたかった
....
倉敷に朝のひかりが落ち着いている
朝の黄昏れのようなひかり
異国の夏の朝のような静けさ
地道な人生を演出する婦人
混み合う10分前の道だった
朝から淋しくて僕も落ち着いていた
幸福とはこういうことを言うのだろう
幸福とは
幸福のようなものが
重ねられてゆくことを言うのだろう
叔父夫婦は熱心なキリスト者だった
はじめてのクリスマスの日
....
こどもたちよ
きみたちが考えている大人だって
実はそうなんだ
失ったことに目をそむけて仕事などしているんだよ
悲しくてさびしくて恥ずかしいお話だけど
こどもたちは地震には関心がないようだっ ....
こどものゆめ幻なんかじゃない
サンタクロースは社会的想像の産物だ
小学生のころ私のサンタクロースは消えた
べつのメルヘンを育てていった
自分が罪びとであるかのような
....
月が隠れる
空には星が
集まっているように見えた
きょうからあしたにかけて
月が欠けて
満ちてゆく
何億年前から決まっていた
そんなことなんだすべては
....
鉄路の車窓に
繁華街と映画館がゆき過ぎた
ふたりで一緒に
映画を見に行ったことがなかった
それでもふたりはよく映画の話をした
ヘブン、竜二、ぼくの大好きな映画は
ふ ....
ぼくだけが四の段おちた
せんせいが心配した
とぼとぼと家に帰った
まえのひ四の段カードをなくしてしまった
だからお家で練習できなかった
つぎの日は九々のテストがなかった
....
ぴゅん ぴょぴょ ぴゅんぴゅん ぴょぴょ
美観地区の入り口の交差点が
信号がかわるたびにそう囀る
ぴゅん ぴょぴょ ぴゅんぴゅん ぴょぴょ
欠けたまま生きている
欠けてい ....
ヨシミが自転車から転げ落ち
あのとき幻視したブルーは
ぼくが描いたことなのだから
イスラム圏のブルーもいずれ
ぼくが物語にととのえてあげるよ
そこかしこにブルーがあった
ブルーのことなら ....
きょうもまたゴルフだ
紅葉がはじまっている
朝早くの雲に虹がかかっている
なにかの前触れだなんて言わないで下さい
大切なひとが怖がってしまうから
素振りをせずに打ってゆく
俺のボールは高 ....
ゴルフ場は途中ガスで煙った
灰色のガスで出来た建物に四方を占拠されたみたいになった
キャディーさんに方向だけ教えて貰ってその建物に打ち込む
ボールがちいさな点になってガスのなかに消え ....
血が足りない
血が漲ってない
興奮に体が耐えてない
どことなく
全身が乾燥している
三ヶ月よく頑張ったよ
おまえもおれも
飲み干したカップを
静かに ....