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まだ若いからだの頃
営業車へともどる夜道に
清烈な花の香がした
まだ相俟みえぬあなたに
届けたくなっていた
僕だけのものにする為に
その小さな花々を毟り
車内にそれを舞い落とす
生ま ....
ベッドサイドの窓ガラスをふく
よくなれよくなれ、そう呟きながら
するとそれは突然
いつも綺麗な景色をありがとう、という呟きに変わっていた
と、その瞬間
まもってくださいまもってください、そん ....
日差しだけが強くて涼しげだった
まだ朝のような夕方
木々の緑は身を揺らせて
一日じゅう空は青のままだった
ぼくは泣きたいほど懐かしかった
ひかりがひかりだけになっていた
それいがい
僕等 ....
智恵子は雨の日には地震が来ないという
昔なじみの校舎のような病院だった
伝言板には院長の行く先が告げられていた
カーテンをあけて雨の日を見つめる
さくら若葉のあいだに在るのは
昔なじみのきれ ....
高原に吹く風が
レーザービームみたいに
追憶に照射され
旅の終わりに描きかけた
一枚が完成する
白樺は動物の皮革のようだ
誰かの故郷が傷ついている
歌手が風邪をひけないのと
おなじく ....
倉敷に朝のひかりが落ち着いている
朝の黄昏れのようなひかり
異国の夏の朝のような静けさ
地道な人生を演出する婦人
混み合う10分前の道だった
朝から淋しくて僕も落ち着いていた
こどもたちよ
きみたちが考えている大人だって
実はそうなんだ
失ったことに目をそむけて仕事などしているんだよ
悲しくてさびしくて恥ずかしいお話だけど
こどもたちは地震には関心がないようだっ ....
ヨシミが自転車から転げ落ち
あのとき幻視したブルーは
ぼくが描いたことなのだから
イスラム圏のブルーもいずれ
ぼくが物語にととのえてあげるよ
そこかしこにブルーがあった
ブルーのことなら ....
きょうもまたゴルフだ
紅葉がはじまっている
朝早くの雲に虹がかかっている
なにかの前触れだなんて言わないで下さい
大切なひとが怖がってしまうから
素振りをせずに打ってゆく
俺のボールは高 ....
ゴルフ場は途中ガスで煙った
灰色のガスで出来た建物に四方を占拠されたみたいになった
キャディーさんに方向だけ教えて貰ってその建物に打ち込む
ボールがちいさな点になってガスのなかに消え ....