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人逝きて風呂場に残る水ゆるむ 石鹸ひとつ投げ入れてみる
玄関に変わらぬ夕の陽が伸びる 履かずにおいた草履の箱にも
あるじ居ぬ蛇口はぬるき水を吐く キッチンに廃棄待つ ....
東京より来たる夫のたこ焼きを返す手つきもあざやかになり
年少の子の足下に犬伏せる晩飯時の特等席なり
形だけの詫びにと届くふた箱のいちごが黒くなってく野菜庫
さっき ....
手を結び子どもの顔して軽々と瓦礫の丘を越えるものらよ
君が見るわすれな草のみずいろが欠けたる空の隙間を埋める
散りさくらアスファルトの上なお走り側溝に飛び込みようよう息絶う
....
君と手をつないで見てる赤い空 春の毒皿どこまで喰らおか
満ちてゆく月を恨みつその日まで素知らぬふりで花摘む逢瀬
かの人を心で百度斬ったとて力なき手は髪を梳くだけ
つい ....