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壁を叩いて何でも喋れ
と耳を当ててみたが

押入の二段目に上がって
寝そべってみたが

時計を裏返しにして
息を吹きかけてみたが

鍵括弧の付いている
ここだけの話だらけが

 ....

卒塔婆を飾る花は何を思う
墓石の影に折り重なり寄り添う人々
7年前の貴方13年前の貴男だろうか
歳月は姿なく容赦なく降り積もる
人々はもうすっかり汚れてしまって
絢爛に咲き誇る花々は一 ....
果てしない天海
月は彷徨う
青白い光が染めて

時間の滴をまとい
徐に揺れる波間

海鳴りは語りかけ
吐息が寄り添う

砂浜にひざまずき
一粒一粒を愛でて

ふたりだけの砂の ....
その夜私は心地良さに誘われ近くの公園をぶらついた
二十歳になったばかりだった

奥まった先のベンチには品の良い老人がひとり
横に立つ街灯の光に暗闇からほんのり浮かんでいる

よく見ると少し ....
青く照らされた砂浜に
微かに残した面影は

君が海へ帰る時

足跡は波間に消えて
涙だけが満ちてくる

「私を探さないで」
砕けた波飛沫は呟いた

寄せては帰る海の鼓動
君への ....
森は茫然と立っている
差し込む陽射しに年老いた裸身を晒す

来る日来る日は雑然と降り積もるもの
過ぎ去った日々だけが温かい寝床だ

森に佇む独りぼっちの木々たち
無表情に見合いながら黙り ....
そのとき
時間という観念が
背後から消えていた

理由は知っていたが
理由という言葉ではなかった

歩くという足の動きは
私自身なのだろうか

蠢くものや湧き出すもの
がズリズリ ....
口元から読経がながれる
もの言わず燃えたぎる焼き場にて
圧倒的なあの世が降りてくる

惜別をぶち抜く感情のほとばしり
わなわなと肩が共鳴する後ろ姿
人目を払いのけ崩れ落ちる黒影

命に ....
手綱に導かれながらよろめく
いつの間にか鉛の靴を履いた

老いに削られ痩せ衰えた体
荒々しい息が吐き出される

ひとつひとつ生まれる幻影
熟さず霧散する己を舌で追う

間もなく土に帰 ....
立ち寄った風に
何処に行くのか尋ねた

風はそれには答えず
貴方は何処に行くのか尋ねた

何処にも行かないよ
と私は口ごもった

全くの戯言だと
中途で気付いたからだ

風は別 ....
昼も夜もない屋敷に独りの老人が住んでいる。
彼は日めくりカレンダーと唯一の会話をする。
愛くるしい動物や癒しの風景が語りかけてくる。
そんな彼が穏やかに息絶えていた。
今日見つかった時はもう腐 ....
【人間になれなかった】
人間になれなかった
野原をひたすらつんのめり
海原を懸命に切り裂いた
だが
人間になれなかった
人間はずっと向こうにある
どこを走ったのか
どこを泳いだのか
 ....
野良が挨拶しているよ

疲れた毛を励まして
露出した皮膚を隠し
道の真ん中を
人々の営みの中を
堂々と
野生の威厳を振り撒き
声ひとつたてず
冷たい日差しを歩いているよ

こそこ ....
いつだか忘れるくらい昔のことだ
うたたねをしていたやかんは飛び上がった
お尻に大火傷を負い落っこちた
あららお水を入れ忘れた
それにしても駄目なやかんねえ
優しいおばちゃんは呟いた
無茶苦 ....
君は一杯着飾っていたね
着けるだけ飾るだけ幸せになれると

友達も言っていた

君には複雑な鮮やかな柄が似合う
肌着はもっと暖かい真っ赤が良いよ
もっともっと着飾った方が

君はいつ ....
四番目の息が聞こえる。
父の息。
母の息。
私の息。
そして、聞こえる。
他には居るはずがない誰かの息が。

まだ幼かった私は、父母に挟まれ、狭い二階の一室で、毎夜訪れる暗闇と遭遇してい ....
【めばえ】
優しい言葉ではなく
優しさって何だろう

おとなっぽさではなく
おとなって何だろう

それが貴女にわかるのは

長々と月日が寝そべって
太陽と月が寄り添った後

少 ....
ぎゅうぎゅう電車がゴロゴロ走る
レールを潰してゴロゴロ走る

メール見るのに体をひねり
携帯取ればメールの先の迷惑顔

おっとおどきとお姉さん
通れぬ隙間を抉じ開ける
私の隣に入り込み ....
梅昆布茶さんの宣井龍人さんおすすめリスト(18)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ここだけの話- 宣井龍人自由詩10*21-12-29
お彼岸- 宣井龍人自由詩6*21-8-26
月夜の夢- 宣井龍人自由詩7*21-6-17
ある晴れた日に- 宣井龍人自由詩6*21-6-11
海へ帰る- 宣井龍人自由詩9*21-6-3
不可逆の森- 宣井龍人自由詩10*21-5-19
- 宣井龍人自由詩10*21-3-30
焼き場にて(改訂版)- 宣井龍人自由詩10*21-3-9
老犬- 宣井龍人自由詩16*21-3-4
風に尋ねて- 宣井龍人自由詩10*21-2-23
死めくり- 宣井龍人自由詩9*21-2-9
青春の記憶(小詩集)- 宣井龍人自由詩14*17-5-4
野良のさよなら- 宣井龍人自由詩24*15-12-12
やかんとおばちゃん- 宣井龍人自由詩11*15-6-26
幸せは物足りない- 宣井龍人自由詩16*15-5-6
四番目の息- 宣井龍人自由詩19*15-4-17
詩の子供たち- 宣井龍人自由詩12*15-3-22
ゴロゴロゴロゴロ- 宣井龍人自由詩9*15-2-26

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