詩の子供たち
宣井龍人

【めばえ】
優しい言葉ではなく
優しさって何だろう

おとなっぽさではなく
おとなって何だろう

それが貴女にわかるのは

長々と月日が寝そべって
太陽と月が寄り添った後

少女は夢から覚めました

【見知らぬ】
見知らぬ人が尋ねて
見知らぬ人
が答えた

見知らぬ人に尋ねて
見知らぬ誰か
が答えた

見知らぬ誰かに尋ねて
見知らぬ私
が答えた

見知らぬ私が尋ねて
見知らぬ何か


【梅雨】
しとしとと
ぴちゃぴちゃと
隠れた空がべそをかく

しとしとと
ぴちゃぴちゃと
雨粒が子守歌を口遊む

しとしとと
ぴちゃぴちゃと
潤んだ大地は眠りについた

【幼く夢見て】
夢一夜。
夜空の七夕への願いを独り占めしたいと思うのは私だけかな?
(織姫、彦星は、きっと私の願いを聞いてくれる。)
年甲斐もなく幼く夢みた夜。

【なかなか、ね】
君は僕をわからない

僕は君がわからない

不思議かな

不思議じゃないよ

みんな息をしているもの

【貴女】
昨日見た貴女は何処へ行ったのだろう
今日見る貴女は何も見当たらない
今日見る貴女は何処から来たのだろう
まだ見ぬ明日は誰が貴女なのか

【最も当たり前の会話、と、そして、】
君は生まれ来てそう経っていないな
誓って望んだことなのか

オギャーオギャー
オギャーオギャー

いずれは来るなら今でも同じ
永久を求めないか

死という文字をいつ捨てよう
永久など何処にも売っていない

この枝
もう花は散ってしまった
あまりに短い繁栄

人間社会を横目で見ながら
一日として休まず明日を夢見る


【記憶】
視界は暗転していき
錆び付いた映画が切断されます
あらゆるすべては消えて
貴方と他人になりました
悲しまないでください
貴方の知らない貴方にいます

【落とし物】
朝もやけむる高原に
少女は昨日を探している
風が吹き抜ける白い肌
何かが君を通り抜ける
草むらに光る昨日の欠片
落とした涙は渇いていた


自由詩 詩の子供たち Copyright 宣井龍人 2015-03-22 00:14:15
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