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  君の歌が聴こえる朝には
  泣きたくなってしまうんだ
  少しだけ風の冷たい、
  土曜日の始まり
  齧りかけのトーストと
  マーマレードのかすかな苦味
  それから君がア ....
    
   だけど君は駆けていったんだ



 思い出の丘を、雲の影が滑る
 丘の緑はかわることなく風に揺れ、
 遥か彼方に、夏の海を臨んでいる
 ごらん、あの細い坂道に
 僕ら ....
 
  *黒猫と少年


  黒猫のいなくなった部屋で、少年は揺り椅子に腰かけてぼんやりしていた。
  がたん、と二番目の窓が音を立てて、
  黒猫が顔を出した。
 「どこに行っていたの ....
  *手紙


  古びた手紙の束を、抽斗の片隅に見つけた。
  色褪せた切手の上の消印から、
  少年は手紙を受け取った日のことをぼんやりと思い出す。
  その日は朝から雨が降っ ....
  
  *バレリーナ


  古びたオルゴールの蓋を開けると、バレリーナがくるくると踊りだす。
  それから、名前を思い出せない曲がゆっくりと流れ出した。
  黒猫は、もう随分前からくも ....
 
 *三番目

  三番目の窓を開けると、その先には夕暮れの森が広がっている。
  それから机の三番目の抽斗を開けると、
  昨日の夜に見かけることのなかった月が眠っていたりする。
   ....
  
  *鉱石ラジオ


  暇をもてあました少年が、ふと思いついて鉱石ラジオを作った。
  黒猫はそのかたわらで目を細めてその様子を見守っていたが、
  いくらたっても何も聴こえてこな ....
  *三日月


  三日月の晩に、少年がふっと部屋から出て行くことを黒猫は知っている。
  塔の螺旋階段に響く足音が、とん、とん、とん、と続いて、
  てっぺんの窓を開ける音が聞こえて ....
 
  *蝶


  黒猫の気だるい微笑みは、いともたやすく蝶を虜にする。
  その静かに差し出された手の上に、青い翅の蝶がとまる様子を、
  少年は頬杖をついたまま眺めていた。
 「可 ....
 *夜半過ぎに


  夜半過ぎになって、その悲しい報せはもたらされた。
  そっと肩を寄せてきた黒猫が、
 「それは悲しいことだわ」
  と、うわごとのように何度か繰り返した。
  少 ....
   喜びも、優しさも、喪失も悲しみも、
   言葉によって届けられた
   わたしは面影を探して立ち止まり、
   時に夢を見たような気がする
   言葉しかない世界で、
   紙 ....
  幸福を抱きとめて静止するあなたは、蕾のすがた
  胸に手をあててわずかにうつむくその、
  長い祈りにも似た、沈黙


  春を知る朝の、淡い喜び
  風が冷たくても、
   ....
  {引用=今も変わらずに花の名である人へ}


  きっと気紛れに入れたのでしょう
  桜の花びらが
  はらりと、
  不意に零れ落ちたので
  もうどうしようもなく立ち尽くしてしま ....
  風が吹いて、あたし
  かんたんに飛ばされてしまう
  未完成な結晶のすがた、まだ
  花にはなれない
  舞い上がって、遠いところへ
  行ってしまうなら、
  今がいいと、思ったの ....
  青い森の中の小さなベンチ
  腰掛けたままの少年は
  もうずっと切りとられた空を眺めています
  かつて街角の公園だったその場所は
  今では小さな青い森
  時折少年の握り締めた手紙 ....
有邑空玖さんの嘉野千尋さんおすすめリスト(15)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
遠く響く朝- 嘉野千尋自由詩12*05-6-18
夏、少年- 嘉野千尋自由詩10*05-4-24
黒猫と少年(8)- 嘉野千尋散文(批評 ...6*05-4-21
黒猫と少年(7)- 嘉野千尋散文(批評 ...4*05-4-21
黒猫と少年(6)- 嘉野千尋散文(批評 ...7*05-4-20
黒猫と少年(5)- 嘉野千尋散文(批評 ...4*05-4-20
黒猫と少年(4)- 嘉野千尋散文(批評 ...7*05-4-19
黒猫と少年(3)- 嘉野千尋散文(批評 ...5*05-4-19
黒猫と少年(2)- 嘉野千尋散文(批評 ...8*05-4-18
黒猫と少年(1)- 嘉野千尋散文(批評 ...10*05-4-17
旅の終わりに- 嘉野千尋自由詩4*05-4-1
木蓮/長い祈りから- 嘉野千尋自由詩12*05-3-31
桜便箋- 嘉野千尋自由詩13*05-2-25
幻視、桜- 嘉野千尋自由詩5*05-2-13
青い森の少年- 嘉野千尋自由詩7*05-1-31

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