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別れの朝
男に眉カットをせがんだ
手先の器用な男は
小さなハサミで
体をまげて
カットしてゆく
接近した顔に
息がかかる
ほらできた
すっきりとした眉
ありがと ....
ノックしてドアを開けると
安堵した君の顔が
見えた
どうだった手術?
家にいるときより晴れ晴れして
当たり前だよ
ずっと痛みを我慢してたんだからさ
そこのテーブルに歯、あるよ ....
幼いころ
のっ原をかけまわっていたあたしの
いつもそばにあったその草花が
いぬふぐり、で
あると知ったのは
高校生のときだった
かわいらしいひびきに
その名をおぼえた
....
静かな 待合室に響く
早口で話す声
隣りにいる付き添いの人は
慣れているのか
相づちさえ打たない
脈絡もなく
しゃべり続ける婦人
耳を塞ぐ
イライラを通り越して
不安 ....
ふと、目をやる
視線の先には 木蓮
ここ数日
一けた数字の寒さの日
もこもこに着込み
大判マフラーの間から
景色を見ていた
ベージュに近い2センチほどのつぼみ
....
好き という気持ちは
天使ではなく
悪魔が運んでくるのかもしれない
この胸の痛みは
鎌状の針で
突かれているからだ
思いもつかない
衝動も
悪魔とは
悪さと書くが
....
きっと その
水色の子は
女の子でしょう
あなたに 毎日
愛をささやきに
来たのでしょう
私の真っ白い子は
おしゃべりで甘えん坊で
食いしん坊でした
どこからか
飛んで ....
何度決意しても
捨てられないものがある
過去に生きているわけじゃないけど
宝物のような思い出は。
そっとそっと
しまっておいて
温かいままでいたい
こんな寒い雨の夜に ....
話しかけないでください
静かに
ハサミの音を聞いていたいのです
質問しないでください
今は
答えたくないのです
話しかけないでください
ただ
髪を切りに来ただけ ....
にゃーちゃん
その首筋に
そっと
顔をうずめると
とても
安らいだ
気分になるんだ
ほのかな
洗濯の匂いと
慣れ親しんだ
肌
ぐぅぐぅと
寝息をたてて
ぐっす ....
くだんの事を
耳にしたことは
あろうか
人に牛と書いて
件
凶事の前兆に
生まれ
その集結と共に
死ぬという
件とは
人の身と牛の頭
又はその反対とも
伝えられ
....
ぬるめの
無色透明の
温泉は
肌をもちっと
つるつるに
してくれる
湯に入っては
地酒飲み
浜を歩いては
湯に入り
湯治の旅は
ゆったりと
深く刺さった
棘のように
貴方の名前が
とれないの
つぶやき過ぎたせいかしら
泣き過ぎた せいかしら
棘は
痛みはしないけど
あたしの身体の
一部になった
まっ ....
気になる
と いうことは
まだ
心 が
残っている と
いうことなのだろうか
深夜まで
足跡を読む
理解しきれない
文字たち
脳裏に残る
モノクロの横顔
....
眠い
眠い
とろとろと
こんな時
脳は
あちら の
世界と
相談をしている
残酷なのに
血の赤が見えない
モノクロームな夢ばかり
見続ける
都下の森 ....
初めて見たドームは
夕日に染まり
厳粛にたたずんでいた
静かに
手を合わせ
一心に祈った
身を切る
冬の川風が
頬に痛かった
1945年の夏
人々は
経験のない
爆破の意味も知らず
ただそ ....
メンテナンスを終えた
体から
さらさらと
水が流れる
この冬溜め込んだ
迷いや悔恨
さらさら
さらさら
流れてゆく
体にも
四季がある
こうして
新しい季節 ....
すらっとした
チノパンの下に
君は
ポンぽこりんを
かくしている
家に帰り
手を 洗い
メガネをはずし
スウェットに着替えると
あたしの待つ
おこたの隣りに
座る
....
午後 4時44分
見上げると
東の高く
薄い青空に
少し欠けた
白い月が
浮かんでいた
立春もとうに過ぎたのに
しばらく
引きこもっていた
たまっていた
所用 ....
それは
冬 限定の屋台
あたしの
生まれた
県北の街
深谷市西島の
母の実家の前に
現れる
夕食前の
薄腹の空いた時間
銭湯のまん前の
母の実家は
タバコ屋さん
....
気楽な女の
お一人様も 珍しくない
今日日(きょうび)
あたしはアイツに
すっぽかされて
居酒屋のカウンターに
座った
日本酒 熱燗!
刺身と焼き椎茸
椎茸を網であぶ ....
コチコチに
凝り固まった
カラダに
腕をまわす
特に
胸のあたりが
ジンジンと痛い
こうして
朽ちてゆくのか
オンナのカラダは
愛されない
惨めなカラダ
0と1 ....
じわじわと
あたし
侵蝕されてゆく
言霊にはまった
もうひとりの
あたしに
いいかげんで
みだらで
じこちゅうしんな
・・・
あ・た・し
侵蝕しつくされた
....
眼鏡をはずした その人は
鋭い瞳をしていた
はっ
一瞬息をのんだ
心臓がバクバクする
今まで見たことのない
ヒカリを放っていた
話していた
その人とは違う
別人を見 ....
日々の感情の起伏を
記す
文学なら 直木賞
式部より 冬はつとめて
鎌倉時代 かな文字で
経を説いた 高僧
小説を書きたくて
画家と同居してしまう
宇野千代
一瞬で ....
旅の荷を置き
コートを脱ぐ
ジョン・レノンのフォト
ゲルニカのポスターが
あたしを迎えてくれた
あっ・・・
トクンと胸が鳴る
それだけで
緊張がほぐれた
あた ....
ひなびた温泉地の
居酒屋で
地酒の熱燗を呑む
まわりは
方言を使う
地元のお客ばかりだ
あさりの酒蒸し
厚揚げ豆腐を
肴に
2合の徳利を
猪口に注ぐ
木作りの梁
温 ....
二十数年ぶりに見た
人の骨は
白く
しっかりとしていた
ついさっきまで
人として
形をなしていたものが
手術台の半分くらいの
てらてらした
金属板の上にある
寿命 ....
次女を産んだ 赤十字病院は
母子同室だった
その日は 満月で
ベビーラッシュ
土屋さんは もう大丈夫よね
そう 看護士に言われて
まんまるの目の大きな新生児は
半日 ....
ひとはみな
死を まとって 生きている
生まれ 出でた
その日から
生を 全うした もののみが
宇宙へと 溶けこみ
次の生へと 流れていく
死をまとい 迷い まとい
今日も ....
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