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私は十三年間
薄暗い工場の中で
機械の一部になって働いてきました
小さな子どもを連れて離婚した
若くもない女には3Kの仕事しかなかった
子どもを保育園に預けて働いた
毎日々
ベルトコ ....
一緒に生まれてきたはずなのに
生きていた痕跡が何ひとつ残っていない
私と同じ遺伝子を持つ {ルビ方割れ=かたわ}
誰の脳裏にも浮かぶことのない
母が亡くなった 今は……
私だけが知っている ....
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こんな記事を新聞で読んだ
アフリカ・ギニアの森で
野生のチンパンジー11頭に
普通の餌「アブラヤシ」と
普段は手に入らない旨い餌「クーラ」 ....
市街地の道路の隅に
転がる猫の死体
それに群がる鴉たち
餌に有りつけたとばかりに
黒い嘴でひき裂き
死体をむさぼり喰らう
死肉は鴉の胃の腑で
甘美な果実に変わる
狡猾 ....
母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったか ....
午後から晴れるといっていた
天気予報があたらなくて
午後になっても
憂鬱な雨が降り続く
湿った食パンは味気なくて
作りかけのジグソーパズルに
八つ当たり
床中に散らばったピース ....
男が嘘をついた
嘘だと分かっていて
わたしは騙されたふりをする
嘘だと言ったら
瞬間に
嘘が本当の嘘になってしまうから
すべてを失いそうで
怖くて
わたしはそれを言えない
男 ....
小さな世界の中で
自己満足という
落とし穴に嵌り込んでいた
仄暗い穴の中では
自分の声しか聴こえてこないから
これが世界のすべてだと
信じてきっていた
たぶん
わたしは小さな蛙 ....
{ルビ宙=そら}に向かって 翳した{ルビ掌=て}
ちっちゃな指の隙間から
見える夜空
月と星 天上を照らす
蒼白く磨ぎ澄まされた星々は
夜の静間に息づいて
光年の{ルビ刻=とき}を数え ....
年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた
こんなもん、 ....
嗚呼
女よ嘆くなかれ
その身から赤い血を流すのは
女に生まれし証
我ら愛する人の種を残すために
月の女神の洗礼を受け
柔肌を赤く染めていく
されど男が創りし神は
女は不浄 ....
昨日は夫の誕生日だった
なのに彼は出掛けて行った
気持ちを挫かれて
私は不機嫌になった
今朝、夫がドライブに行こうと誘う
久しぶりにふたりで車に乗った
森林の中、滝のある所を散策
....
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あ、
見上げた夜空に
流れ星が落ちていく
急いで願いごとを
心に描こうとしたら
瞬く間に消えていってしまった
ああ、
なんと儚い
....
赤い月・青い月・黒い月
月はいろんな想いを映してくれる
わたしの心を捕えて放さない
あの月は魔物……
赤い月
男の背中ニ 爪ヲ立て
傷口から滴ル血で
夜の月ヲ 赤く染め ....
つながれっぱなしの犬がいる
中型雑種茶色の犬だ
散歩してるのを
一度も見たことがない
コンクリートの駐車場の中
小さな犬小屋で暮らしてる
動けるのは鎖の長さだけ
その空間の中で
お ....
降りつづく雨のせいで
部屋の空気が重く感じる
ポツリポツリと奏でる サティのピアノはけだるい
大きめのポットにダージリンティを入れて
ゆっくりと茶葉の広がる時を待つ
雨の匂いと紅茶の香り ....