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鳥と話そうとする者がいた
鳥は陽気にさえずり明るく応えた
石と話そうとする者がいた
石は沈黙したまま
ただその表面に瑞々しい苔を宿らせ
思いを告げていた
森と話そうとす ....
優れた作品はその表現手段を選ぶことなく、絵画的であり、音楽的であり、文学的である。
受け手の感受する入口が違うだけで、感性のフィルターを通過して、本質へと伝わり、何らかの示唆を与えるものである ....
「むせないように、ゆっくり吸い込んで。そう、深く。目一杯吸い込んだら、そこで息を止める。出来る限り長くね。堪えきれなくなったら、注意深く鼻から細く出してみて。少しずつね。一編に吐き出して、咳こまないよ ....
雨の止み間に
雀は求愛のダンスを踊る
雄はたたんだ羽と尾羽を震わせ
ぴいぴい鳴いて
切実に請い願う
しかし雌は植木鉢の中の草の実を
ついばむばかり
興味がないよ ....
私の生活が
思惑が
願いや祈りが
喜びや悲しみが
虚ろな無知が
不断なる憎しみが
この雨に
濡れそぼる
外で飼われている
年寄りの秋田犬が
人の通り掛かるのを
眺めている
....
キビタキが鳴く
森の中の梢で
黄と黒と白と
震える喉の橙が
新緑を溶け入らせ
森は内側から喜びの歌を聴いている
そして私も
オオルリが鳴く
川のほとりに立つ
高い高い木の頂きで
空よりも
水よりも
深く青く清澄なる色から出る音色に
森が統一されてゆく
線路脇に
薄紫の花が群れ咲く
春はこういうところから
姿を見せる
和らぐ風に揺れ
待ちかねた日を浴びている
「我等この花以上に何を知るというのか?」
花以上でもなく ....
まだ春が来ない山
夜が明けた静かな土を霜が押し上げる
傍らで小鳥が動き始め
冬枯れの落ち葉をひっくり返す
左手は日の光に溢れ
右手は陰に沈み黙す
私はその中の尾根を行く
....