すべてのおすすめ
くだものまるごとのみこんだ
ひとくちめで水がうまれて
ふたくちめに街がうまれた
もうひとくちはいらない
だれかの世界にこぼれ落ち
やわらかい素足に踏みつぶされて
かたちを失って色は破裂 ....
ひらがなは、いやだ
ひらがなは、かっこわるい
ぼくは、かたかなになりたかった
もっと、すぽーつかーみたいに
まっかなからだで
びゅんびゅん、はしってみたかった
そうして、あのこをむかえにい ....
鏡の前でポーズをとる双子の弟
の背中を手鏡ごしに見つめる双子の兄
その兄の姿を鏡に映す双子の妹
を鏡ごしに見つめる双子の姉
それらを外からカーブミラー越しに観察しながら
どの子とババ抜きをし ....
ガムをかみ
かなしい時間をつかまえた
大人っていっつも
こんな気持ちなんだろうか
いっそこのまま
九九でも唄って
神隠しに遭いたい
半ズボンに
両手を突っ込んで
味のしないガムを
....
ただいま。
とは言わずに
疲れた。
と言って玄関を開けると
五年ぶりの父は
風呂にでも入れ、と言った。
ただいま。
とは言わずに
なんだお前か。
と言って五年ぶりの兄は
新聞を ....
車窓のない列車は
「夜目」という名の駅に向かい
走行していた
乗客は皆、無口だった
そして窓外の景色でも見るかのように
ただ壁の方に視線を向けていた
車窓のない列車というものは実に ....
機械を買った。
何の役にも立たない機械
球体を半分に切った形の
透明なガラスケースの中に
小さな羽根のついたモーターと
豆電球だけが配線され
丁寧にハンダ付けされた
小さな機械
....
ここが僕の新しい寝床だ
うず高い廃家電のベッド
人懐こい重油の匂い
腹の虫をアジる革命のような
焼き立てパンの香りも
まさかここまで追ってきやしないだろうから
もう安心して唾液を胃に刺せる ....