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三月の飛鳥山
王子駅から望むと
厳冬時とさほど変わらぬ
枝振りの樹々が
何の衣も纏わず
剥き出しではあるが
陽光に透けて
半月後の桜色の
淡い期待を靄のように
纏っている
穏や ....
たとえば十年弾かないピアノになりたいので
す たとえば乾いたウェットティシュになり
たいのです
薬局の陳列棚にはカフェイン剤と睡眠導入剤
と鎮痛剤が並んでいました ボタンを掛け違
えて服 ....
私の皮膚に
とても近く触れて雨がある
どこからきたものか
わからぬ雨がある
ところで
どこからきたものか
知っている君からの便りは
私からこんなにも遠い
遠い君を想う
今 雨 ....
そうして
列車は燃え上がる火山の山腹を廻り
向かい合って座っていた僕たちの
車窓から美しく災害が眺められた
列車のドアから乗客たちが飛び降りていった
飛び降りては降りそそぐ炎のように水鳥を抱 ....
庭園を吹き渡る気流に乗って山脈を越えると
なだらかに広がる山腹の緑の森と
森に囲まれた湖
そして川があり滝があり
庭園を巡る園路は地形に沿って這い回り
緑の平原は地平まで広がり
その地 ....
境界。光がゆるやかに拡散し、とびはねて。
舞い散る分離した色、いろ。
/夏の砂だの、猫の毛だの、ゆくえのないか
んじょうだの、とかげの過剰なしっぽだの。
大気はそんなものをすべて包容するの ....
白いペエジにバラバラと落とそう
もうこんな方法しか思いつけない時間なんだ
空洞はごうごうと風の音しか響かせない
なのにすがりたいほど 指先は震え探す
君の温もりなんて知らない
愛さえ ....
こわい夢をみました
こわい夢はこわいものになって
私を覆っていきました
なぜこわかったのか
それは私にはかなわないものだったのです
私がなにをしても なにを言っても
言葉が通じなかった ....
あるうららかで暖かな日
ふらり散歩に出てみる
あてどなく歩いてみる
春風はどこか優しくて
さらり南から吹いてきて
私の髪をもてあそぶ
花開いたジンチョウゲの香りが
....
子供の心を忘れない大人になるんだ
いつもそう 思っていた
マックで子供あつかいされるの
嫌だった
....
台所に転がっていた
折りに入っていた桜餅は
ちんまり小さくて
一口でも食べ切りそうだ
桜色が濃すぎて
鮮やかでキッチュで
どう見ても体に悪そう
だから少しニヤけながら食べよう
....
気づきませんでした
知らぬ間に
時を なくしていたのです
one hour ahead
そんなときはきまって
静かに 自分を抱きしめる
そうあることが、あたりまえなら
失うことな ....
私 あなたに好かれたくて
あなたに好かれたくて
でも
私は私の疑問符を
飲み込めなかったの
どんな風に
みっともなくうつっても
私 私でしかいられなくて
あなたを求める手を
....
後からわかる優しさって、すこし心がいたくなる
もぐっていたのに起こされて
携帯電話の音でした
向こう側からきこえてる
終わりの知らせの音でした
冬きたりなば
春です 春 が来ました
花です 花 が咲きました
夢の中で溺れてい ....
くらやみのひかれた丘の上で
私は黙想している
近くに大きな河がある
冷たい風の向こうがわ
乳のように深くて豊かな河が
夜に寄り添うように
よこたわっている
河は今、水かさを増している ....
私って口下手過ぎるよね
神田東松下町にある小さな問屋さんで面接受けたあと
どこをどう歩いてきたのか
気がつけば聖橋の上から鈍く光る中央線の鉄路を眺めていた
ここから飛び降りたとしてもね ....
光りがこぼれ
海鳴りが、さわがしい
海峡は、もう春の白波をたたえていました
モザイクのような潮の流れに
遠く、
アシカたちの群れる灯台の島は、にぎやかさを増して、
その鳴き声を潮風にの ....
鉄道都市にある高層ビルディングのてっぺんにて
皇帝ペンギンが一羽
光ったり消えたりしている。
(蛍みたいだ)
西方から見るといくぶん寂しげな東の巨人のなかで
光る皇帝ペンギンは真夜中の迷える ....
一度乗ってしまえば、後はひたすら上昇し続けるしかない鉛色の集団エレベーター、
もし君が雨に濡れたアスファルト芳しい地上に再び戻りたいと思ったのなら、
神と同胞と家族を裏切り、心変わりしてし ....
物思いにふけるために台所にたつ
たくさんの命を切り刻みスープをつくる
どれも円
どれも丸い命の切り口を
直線の刃ですとんすとん
と切ってゆく 想いはだらだらと続くのに
炎はまあるく ....
クラゲの夢の中で
わたしは一輪のタンポポでした
ぽかんと風に吹かれて
空を見上げているばかりでした
タンポポさん、と幼い声で
男の子が手を振ってくれました
わたしには振り返すた ....
(月を黒い種に、太陽を色彩の影のない輝きの雨にして)
ほんのりと甘い、果物の匂いがした
乾いた風が吹く緑の丘の上から
眼下に広がる果樹園を見下ろす
頭上の雲から誰かに見張られていて
けれ ....
息を吸って吐く、ということが
ぼくにできる最大限の生き方だと思っていた
*
雨だれを視線がおっかけている
その、
背中には哀愁の目が向けられてるから
不自由を強いられる体をごま ....
君がオールを漕ぐ
水色の湖にガラス底のボート。
ゆらゆらと
水面に浮かぶ午後の光が
君を映す柔らかな鏡になる。
水中にはいくつも
小さな白い花
手を伸ばして拾いあげる
頬と頬を寄せ ....
忙しい日々のレールを脱線するように
不意に訪れた長い休暇
病室のベッドに横たわる僕は
窓外に立つ
独りの樹の葉群を躍らせる
風、を視ていた。
( きらきらと、協奏曲の奏でる ....
四ツに割ったリンゴを
庭の木の枝に刺しておく
この冬を越せますように
ヒヨドリたち
どうか無事に越せますように
海峡を越えていく鳥もあるという
敵に襲われぬよう波のうえ低く
群れ ....
{引用=
誰も知れない部屋に
愛しい疲れて飽いた私のプシケ
その瞳の黄金の闇に恋をしてから
どうにも朝が眩しくて
指先に掴めない月光を纏わせて
草原で花冠を編む
春雨のような声で静寂 ....
ちょっとした長さのフレーズがひとつ思い浮かんだ。
それだけならこれまでにも何度かあったけど、
いつもと違って放っておいてもしばらく頭から消えずに、
いつの間にかその次の一節までぼんやり輪郭をつく ....
三日月の先にしがみつきながら
私 何がこわかったんだろう
考えに夢中になって 手を離したら
頭からおちながら 見えた風景
山沿いの小さな屋根
箱みたいな家の
中にも人が住んでいるの? ....
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