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上りの通過列車が
雨上がりのプラットホームを過り
色褪せたベンチの水滴を
さらってゆく
少し欠けた白線と
凸凹黄色のタイルは
きっと黙って
それを見ている
プラットホー ....
あの日も汗を見ていたのは
水色のユニフォームと白い靴
時の詰まったタイムカードに
行儀よく刻まれた青紫色の印字
晴れた夏にタオルを投げ捨て
雪の日も半袖は変わらず
(腰に装備し ....
赤錆の目立つ時刻表のバス停に立ち
来るか来ないかの
微妙な時刻にバスを待ってみた
進路の前にバスは無い
順路の後ろに気配も無い
行く先も馴染みの無い駅の
名前の書かれた ....
秋の匂いのする風は
夏毛にふわり優しくて
愛なんてものを
かたちにして
誰かに見せたい気分になる
さっき
薔薇の棘みたいに
剥がれ落ちた爪は
カナシミってやつと戦ったから
ゆらゆら尻尾が休憩 ....
わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる
書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて
こっちにきて
こっちにきて、と ....
寂しがりやの人格は
寂しさを乗り越えるためのもの
生まれてきた日
愛に溢れていたことを
ただ思い出すだけ
臆病な人格は
おそれに立ち向かうためのもの
小さな手足をして ....
風が雨を含んで
空色は薄墨模様
少し、
あと少しと待っていたら
わたし
咲きそびれたらしい
今から夏を追いかけて
間に合わぬなら
誰に囁くこともなく
この秋雨に
紅を濃くして
きっぱりと ....
その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど
無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき
それは
一群れのシロツ ....
まるで他人行儀な
挨拶で書き始めたのは
あなたの選んだ便箋が
何だか照れ臭く
上目遣いにさせたから
感情を露にせずとも
温かな文となるようしたためたい
そんな課題 ....
帰り道は
昼の天気予報どおりに
激しい雨
ふと視界に咲いた銀色の傘を求めた
縁取り、白
フレームは銀
それを広げて歩くのが
今日の雨にはふさわしく思えて
....
時計はもう帰る時間
もう少しと言ってよいのか
帰ろうと言った方がよいのか
曖昧な夕暮れに
曖昧なフタリが戸惑う
飛行機雲がくっきりと
空色を二つに割って
藍が半分
仕事帰りの溜息と
一緒に開ける玄関に
がさりと音立てるチラシ広告に隠れて
茶封筒がひとつ
独りよがりな祈りを
天使は聞き届けてくれたらしく
それは
ご褒美のように
届い ....
届けられたのは
便箋にして二枚の
こころの欠片でありました
丁寧な挨拶の他には
少しの友情のような気配
けれど
こころ火照らせるには充分な
あなた ....
いのちあるものを
司る月の満ち欠け
この8の月は
月が二度満ちる
その不可思議に
神聖な月は
青い月と聞く
頑なな心の闇夜も照らし出す ....
今し方まで
泳ぎ回ったシーツの海は
すっかり波立ち
闘うように繰り広げた時間を物語る
抱いたのは
きみのかたち
果たしたのは熱情
....
闇の中で
もう眼も慣れたというのに
きみは眼を瞑れと言う
憐憫を乞う少女の真似をして
外は月の夜
カーテンの隙間から
差し込む我が味方は
白い ....
一瞬
ふたりの思惑は重なって
短い沈黙が生まれる
幾度触れても
求めたい唇に
一度は小鳥のように
二度目は
シェイクの最初の一口の ....
花の表紙のノォトの中に
それはそれは
大切な風に書かれていた
日記であったのか
詩であったのかも
定かでない
淡き恋の想いについて
吐き出された拙い言葉の塊
まるで ....
ほんのり
ほんのり
片思い
恋の悩みと語るには
あまりに未成熟
きみの手紙の「ふ」の字から
微笑む顔を想像し
眠い眠いを繰 ....
不覚にも
こころときめき
きみの一挙手一投足に
いちいち振り向くこの僕
恋なんぞ
有り余っているのに
何故またこんな
浮かばれぬ思いを
....
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