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僕の
大好きな人が
川の向こうの町に引っ越した
喪服の列が東から西へと
空を覆うと
僕は 川を渡れる
夜は死ぬことを許すのだ
うすくうすく皮膚をはいだ
剥がした膜のような皮から光が透けた
板に彫刻をほどこす要領で 次から次へと
腕に軽くあてたカミソリが はいだ
腕に残った剥がし跡はほんとうにいたそうだった
う ....
・
机を彫刻刀で切り付けて
切れ目をひとつ作って指で開くと
そこに海が広がっているときがある
授業中やお昼休みの間はつま先から飛び込んで
そこでじっとしていた
息ができないという点では ....
昨日起きて、天井がくるくる回りながら、おりてくるのを見て、
これは、カラスの羽根が抜け落ちて、生え際を中心に旋回しているのと同じなのだなぁ、と思った
私と天井の間には、無数の距離が、単位が、空 ....
恋はほんのいっとき 愛は永遠に続いちゃうらしいの
でも愛して欲しいって思ったらだめ?
自分のことはさておいて あなたの幸せをこれでも願ってる
たまには思い出してよ 口からでまかせで私をかわ ....
情緒に問題あり、と
言われた、三者面談で
帰り道、お母さんが
泣いていた、自転車の
荷台で、情緒の意味を
分かりかねていた
テンイヤーズオールド
西日のまぶしさだけ
息が詰まっ ....
たとえば僕が死んだら
「これで世界はほんの少しだけ平和になった」
とつぶやいて
盛大ではないけどささやかでもないパーティを
みんなで祝ってくれないか
たとえば僕が死んだ ....
眼を閉じれば
夢もない空が続くばかり
あなたのために歌うつもりが
もう言葉を忘れた
無言の束縛などありはせず、結局は全て
あなたに委ねられている
数えることを怠 ....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
ミルクが欲しい1歳は
男が欲しい21歳に
あっけなく捨て去られる
新しいゲームソフトが欲しい12歳が
プラダが欲しい32歳の
財布から金を抜き取る
夢が欲しい33歳は
安定が欲し ....
あなたの好物を作ろうと
夕暮れ
サンダルを引っ掛けて買い物にでる
昨夜の 些細ないさかいの 償いに
海老の殻を
無心でむけば
いとおしさに変わるような気がして
という
無邪気な ....
彼女と喧嘩して
いい加減にしろ
と怒鳴るつもりが
いい加減にすれ
と言ってしまった
こらえたがやっぱだめで
吹き出してしまった僕の
少し後に吹き出した君
ふたりで涙を流して ....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
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