すべてのおすすめ
それは
冬 限定の屋台
あたしの
生まれた
県北の街
深谷市西島の
母の実家の前に
現れる
夕食前の
薄腹の空いた時間
銭湯のまん前の
母の実家は
タバコ屋さん
....
退職した職員とこじれ
くたびれた顔をしていた呑気な社長が
一人残って書類の仕事をする僕のもとへ
ふらりと、やって来た
お客様の心無い罵声を浴びて
机に顔を伏せていたまじめな先輩 ....
{引用=
真夜中に犬の声がかけてゆく
やっと帰宅した息子と
息子の帰宅を待っていた家内が
ダイニング・テーブルではなしをしている
声が
ボソボソきこえる
テレビの ....
愛さえあればなんてね
でもそれってお金で買えそうな気もするよ
何もしないからと言いながら
私の背中に変なのを押し当ててくる
そんな安っぽいんじゃなくてさ
至高の愛
とか
無償 ....
暖炉に入れたのは不器用に割った薪と
友たちの笑い声
寒い、寒い夜、仲間が集まった
白髪を気にしながら集まった
薪を手に取る友の手の皺は深い
笑顔も皺だらけ
でも ....
施設の中庭のベンチで
ゆっくり日向ぼっこする
老人達の独りが
突然立ち上がって何かを叫ぶ
こんな筈ではなかったと
こんな方向でなかったと
こんな場所に来るはずではなかった
こんな終わ ....
琥珀色のサウンドトラックが、
頭蓋骨の内側を濡らしていく
すっかり皺が減り、ツルンとした私の大脳皮質
鼓膜までねじこむイヤホンや
タイムラインを流れる電子文字で
刻まれたものが薄れ、 ....
責めて
責めて
自分を責めて
カラッカラになるまで
罵倒して
罵倒して
自分を罵倒して
キリッキリとするまで
何にもならないその行為が
習慣のように 当然のごとく
繰り返さ ....
日常で化粧をしなくなったのは
心に化粧をするようになったから
泣きそうな心の形をキレイに誤魔化して
ムスっとした素顔で
あなたの言葉を待っている
もうくれなくなった言葉を待っている
そとの喧騒をしめだす
システマチックなロマンチック
コンビニエンスストアはルンルン
肩寄せあう
住み分けの商品たちは 屋台骨
あきないをしっかり支えている
出生証明書
....
.
地に灼{ルビ=いちしろ}き椿は燃える
雨に打たれても猶お灼く
雪にうずもれて猶お灼く
涸れ枯れの遼原に椿燃ゆれば
.
吹きしきる睦月の霙{ルビ=みぞれ}に逐{ルビ=お}われ避り ....
北に向かった
鈍色の海、灰色の波
身をゆだねる勇気はないけれど
寒い海に抱かれたかった
何も告げずに飛び出したあの街
何かが変わるだろうか
気がついたらこの海辺に来ていた
冷たい風は ....
うすい羽のはえた夜行バスにのって
月あかりにかがやくいくつもの雲をこえて
あいした理由も
あいされた理由も
すべてあなただったから
いつもの街角、いつものバス停
やわらかな猫の手に夜の ....
今日の太陽は 虹色
うろこ雲の間から のぞいた その光は
魚のような潤いで太陽の位置周辺に
虹の同心円が見える
いきもののような 空だ
太陽は 天海を漂っては いな ....
抽象画家が描いた
うつくしくはりめぐらされた運河
本流が支流になって
クモの巣状の千の川になる
―― そこに
ジェルマン
という街がある
静電気をおびた ....
神様神様神様
あたしの足の裏に
ずっと地面を
地球をくっつけておいてください
あたしの足で
どこへでもゆける可能性をください
あたしの足で
ふんばる力ください
背中に羽がはえ ....
ハイツ和合にたずねてゆくと
花火ちゃんはフローリングの床でお皿をわっていた
ぺたりとWの字にすわりこんで
からだやわらかいんだ
ね、つめたくない?
訊いてからちがうちがう
なんでお皿な ....
君の向こう
朝のひかりは
ガスコンロ
その火の青さ
その火の青さ
しずかの海
あらゆる無機物も有機物も
独自の発火点や燃焼点を持っている
太陽の温度 ....
そのペンを持つ手
電話をにぎる手
無意識に髪にふれる手
ギターのFコードを押さえる手
ピアノを弾く手
絵を描く手
手話を正確に表現する手
文庫本をめくる手
そして細 ....
ラーメン屋さんで
たたんだじめん
たんたんめんの見間違い
ぱっとひろげて春の花
ぱっと広げて雪景色
夏草野原や
紅葉の道や
地面が少なくなりました
街にほとんどなくなりまし ....
ひとみを閉じていればいい
こころを閉じていればいい
電車が通過する前の
空気と地面の振動が ....
ある人にとってのわすれな草は
かすみ草
ある人にとってのわすれな草は
シロツメ草
わすれな草の本当の姿を
ひとは あとから 知るのかな
ワスレナ草って
忘れられるのか ....
浜辺に崩れかかった民宿が一軒とりのこされていて
ひやけた壁のうえを暗灰色のツタが何十本もからみつくようにして這いまわっている
看板に書かれていた文字はとけたチョコレートのようにぼやけ
まっ ....
恢
きくところでは
りっしんべんは心をあらわす
筆づかいはひととなりをあらわす
書の道のたしなみがあれば
ときをしずめて
おもむくままに
かすれも太く
しゅうしゅうと
....
『意匠作成中』
そうステッカーを張られた真っ白な看板は
街の夜の中ライトアップされて
自分を飾る色を今か今かと待ちわびる
何を描いてもいいよとブラシを渡されたけど
もとより絵心なんてなく ....
風が無い季節に
病葉(わくらば)が落ちる
眼に見えない時間が
自分の掌から零(こぼ)れ落ちて行く
突然訪れた季節に」
黄色の銀杏並木は
幹まで落葉で覆われ
道行く者の足を ....
ぞんざいに揉まれ
熱湯で煮出した
雑味だらけの茶の味に
ツタの剥がれた哀れな球場を思い出す
共に朽ちたかったのだろうに と
勝手な想像で
乳白色した壁を哀れむ
茶は雑味だらけで
熱さは ....
.
さわさわゆれる
きみとゆれる
なにもかもわすれ
きみとゆれる
.
おれたち仲わるいんだぜ
ぶつかるとゆれるんだ
もつれるとゆれるんだ
せまい座席に2センチあけて
く ....
昔 うちの父さんは
カレーライスにソースをかけて
スプーンをグラスに突っ込んで
上から下までぐるぐる混ぜて
それはそれはおいしそうに頬張っていた
ある日 それを友達に
なにげなく話した ....
{引用=
夏がころがりおちてゆくのを
陸橋のうえから
ぼくは
ずっとみていたんだ
いつかかならずくる
嵐が
ニンジン畑のどこに潜んでいるのか
だれも知らないことが残念でなら ....
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