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わたしたち
言葉を確かなものとして笑う
あなたは泣く
わたしの唇を滑り落ち
プリントアウトしたような顔で
あなたとわたし
美しいドット柄になって
声をぼかす
張り付いた色彩と沈 ....
友からの嬉しいはずの電話で
性懲りもなく皮肉を口走りそうになって
心にもない綺麗事を並べ
いたしかたなく流行りの冗句で取り繕う
苛立ちを持て余していたのは
何も自分ばかりじゃない
本当 ....
少女の飴缶の中には
大小の安全ピンが無造作に入っている
色とりどりの錠剤に紛れ込み
それは笑っている
そして時々見え隠れして光る
虹を裂く蜻蛉のように
カラカラと音の鳴る鞄を引っ提 ....
のぼせたわけじゃないんだよ
つい沸かしすぎた湯が
総毛立って縮こまる私を
ひとときたりと忘れぬよう
きつく抱いて締め上げるから
ほんの少し恥ずかしかっただけ
少女の頃に見たきり ....
不自由なペンが
真っ白い紙の上を暴れるとき
あなたは
見たこともない景色を見るだろう
インクを調整しやすい
それだけのひと
わたしは
それだけのひとになった
利かないものは ....
こめかみで飲んだ弾丸
胃の中で溶けるのを待っている
ナンセンスな朝
知らない爺さんとキスした日曜の
けだるい舌
チョコレートにシガー
鈍痛の肚裏でわたしは何度も死んだ
二 ....
ヘリコプターがパタパタとうるさい
なんだあれ
空で布団叩いているみたいだ
さっきまで君の夢を見ていたと思う
頭を傾けるたび隙間が空く
脳がたぷんと跳ねる
ああ潮の匂 ....
お外が嫌いなイエネコは家の中だけがその世界であったために、野良猫たちに比べいのちに触れる機会が極端に少なかった。それだけに異様な繊細さも見せた。家族の靴音をそれぞれ聞き分け、誰かが帰宅するのを何 ....
夜更かしの羊飼いは大層身軽で
わたしの寝室へ夢のように舞い降りては
夜毎数字をひっくり返す
空がまるで海なのよ
わたしはちぎれながら泳ぐ
よれた真夜中を
雨に打たれるカラス ....
籠の中の小鳥が声高に鳴く
開け放たれた窓からそよぐ風に喜んで
庭先で君はひとり楽しげに
プランターのおじぎ草を突いていた
鼻腔を突くのは蒸せた花の香り
ざざざと風は水路を走る
千切られ ....
判定窓がニヤリと陰性を示したので
私は軽やかに手を振り
妊娠検査薬をゴミ箱に投げ入れた
奇形の子を孕むつもりはないけれど
薬漬けの身体で抱かれることに
何のためらいもないんだ
不意 ....
アスファルトには干からびた雛の死骸
散水の終わったテラスでは
欠けた樋から不規則に水が漏る
深爪の指を舐め
ただそれらを見下ろしている
穏やかな午後だ
路傍に転がる石ころのように
....