{引用=
赤くて甘い熟れた先端よりも白くて硬くてすっぱいお尻を
齧ったときのほうがずっと春に近づけるんだってさ。
朝から晩までへたのまわりに齧りついたのに、今日の天気は雪です。
舌がただれて痛 ....
授業が終わると、真っ先に教室を出る
いつもなら軽音楽部の部室で
とりとめのない話をして
演劇部の発声練習を聞きながら
ひとりの娘の姿を追いかけるのだけれども
夏休みの間、炎天下の中ひたす ....
01
図書館にパンが落ちていたので男は拾って食べたのだが、それはパンではなくムカデの足だった。
02
図書館の大砂漠で遭難した司書は一週間後に救助され、その翌年には大統領になった ....
「鼻が長かった」彼女は言った
「ゾウみたいだね」僕は言った
「ううん、キリンみたいだったわ」と彼女が言うので
「首も長かったんだ」と聞くと
「歯がキリンみたいだった ....
朝起きると雨が降ってたんだ。
休みの日に雨が降っていると僕はすげー落ち着いた気持ちになれるんだ。
でもその日はダメだった。なんだか頭が痛かった。
そうだ、すげー憂鬱な夢を見たんだ。きっとそのせい ....
苦手ってわけじゃないんだけど
それでもやっぱし
う〜ん
苦手ってことなのかな
毎年この時期に行われるんだよね
以前は建物の裏口に横付けされた検診車のなかで行われていたんだけど
この ....
わたしの水の中に
あなたの耳だけ寝そべっている
小さな胎児みたいに
ゆらゆらと漂っている
わたしの声が
最後にあなたを満たしたのはいつだったかしら
瞳を瞑りながらわたしを探すあなたの指 ....
Re:プラネット・ホームにて
地球に宇宙が墜ちて来た
次世代の呼吸の仕方を思考して
マリービスケットをかじろう
私はあなたの二酸化炭素
緑葉体を頂戴よ
宇宙一 ....
なにもかもうそっぱちでもひりひりするひふ1ミリの世界がいとしい
プレパラートに君の死骸をとじこめて春のしずかな羽化をみている
透明なマグニチュードが浚う朝 ひとつの骨 ....
初老の母ちゃんを乗せた
旅客機は
赤ちゃんを産んで間もない
姉がいる富山を目指し
羽田空港の滑走路から
大空へ
飛んでいった
定年をとうに過ぎた親父は
警備の泊まり ....
ぼくたちは春を起点に遠ざかる公転軌道を失った星
君という病を喪いかたかたと瘧(おこり)のように震える柱
便箋を一枚一枚丁寧に破ればただ ....
ひとの気配に気付き上体を起こしてみると
逆光に髪の長いおんなの姿を認めた
それがあのひとの妻美佐子さんとの最初の出逢いだった
彼女について何かとあのひとから聞かされていたのと
私に用事があ ....
ボトルの曲線
タイトの曲線
かつんかつんのOLさん
かかとすりへりうむでへんな声
ださないで
浮かんでて
フルーツ消しゴム噛んでばらばら
吐き出しても残ってる
どうしてこんなことし ....
オハヨウが
晴れやかに言えてますか
アリガトウが
滑らかに言えてますか
笑い方が
相変わらず下手ですね
奥歯が
痛いのかと思いました
コンニチワが
軽やかに言えて ....
1という字のように立ち 一という字のように眠れ 孤独な無限
0なんて発見するからいつまでも君の不在が消えないままだ
ON/OFFのあいだに広がる宇宙にて親指は祈る メール、 ....
1
恋にはあなたが必要だ
あなたは僕を和ませる
愛にはあなたがかかせない
あなたのために僕は苦しむ
2
あなたがいくつ歳を重ねようと
ぼくはあなたの若い歳しか覚えてい ....
白梅も微睡む夜明けに
あなたしか呼ばない呼びかたの、
わたしの名前が
幾度も鼓膜を揺さぶる
それは
何処か黄昏色を、
かなしみの予感を引き寄せるようで
嗚咽が止まらず
あなた、との ....
それは
砂糖一袋分の時間だという
いったい何のことだか
あなたの言うことは
時々なぞなぞみたいで
私にはよくわからなかった
息が苦しい
100対3で、塩の負け
なんの勝負だ ....
猫についた蚤をあつめて
梅酒の瓶で飼育していたら
祖母が気持ち悪がって
いきなり燻煙殺虫剤を炊いた
薬剤で呼吸が苦しくなって
泣きながら倒れた私の体から
一斉に逃げ出していく蚤たちを見た
空にはしごが掛かっていた
消防車よりも
うんと長いはしごだ
足元には
きれいに綿布で包まれた
弁当箱が置いてある
きっと箸箱のように
明るい性格の奥さんが
毎朝持たせてくれるのだろ ....
非常階段で待ち合わせ
そんな滑稽さでもって
世界から逃げている
きみとわたし
日中の駐車場で
眩しいくらいに飛ばされた
二人の立体感が
遠い
ふれている間だけ
呼吸するのを諦 ....
(ローゼズポーゼズモーゼズトーゼズ)
(スノーフレイクスオンアイラッシズ)
…
鉄工所で溶接
夢で描く美女は妖絶
ダムダム
プレートからは
ダムダム
まっさかさ、ま
機械のド ....
メイプルソープの例の髑髏の写真を見て脳みそが後ろに転がってから前転倒立をいとも綺麗に極めてくれた頃の感覚を、僕は忘れない。携帯の音声認識に眉と静脈を顰めながらも必死にマイクに向かって叫んだことも、興味 ....
恋人たちが
裸になる夜は
計算が合わない
数が音に
なってゆくから
建築物の息づかいも
聞こえてきたよ
スポンジみたいな
緻密なリズム
さびしさの背中に
スプーンを落として ....
すきっていってよ、ねえ
なんでだまってるの、
ねえ
きらいだなんていわないでよ
うそでもいいから、すきっていってよ
*
さびしくなってぼくはひとり うちゅうへいくの ....
黒髪にいたしまして
お母さま喜びまして
スーツを一着揃えまして
デキル私になりきりまして
シュウカツカツカツ
ハイヒールと
シュウカツカツカツ
ペンの音
順風満帆だった漕ぎ出し ....
一限目 美術
熟れすぎた柿の実のような夕陽が
じゅくじゅくと空を滲ませ
遠近法に習って雲は巣をはる
二限目 音楽
カラスの眼光から逃げるように
街の雑踏の中音を捕まえにゆく
アス ....
上皿の落ちぬ程度の揺れならば均等と呼ぶ 胸に天秤
満水の体育館で耳鳴りがしてからずっと水底に居る
液晶を両手で包む二十五時 言葉はなにを伝えるだろう
....
桜の花びらが落ちているのが綺麗で、拾い上げようとしたら、それは蝉の亡骸だった。
かさかさと乾いた音がして、命がない、ということは、水分が無くなってしまうことなんだな、と思った。
蝉の亡骸を犬にやる ....
親指を蜜柑に差し込むと
右手から全身に流れてゆくメロディがある
皮から弾けた汁は、血液をオレンジ色に染めていき
弾ける微炭酸の気泡が、心臓の凝りをほぐしていく
蜜柑の房の皮を八重歯で裂くと ....
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