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伸ばした腕の先の
手のひらの先の
中指の先っちょが
触れるか触れないか、
のところまで
夏が。
列車を待つ顔たち
照らす陽射しの角度を
知ってか知らずか
右へ傾く
....
洋ナシをひとつ
手にとって、
戻した
わたしは今
シアワセです と
伝えたくなる
たとえ
嘘だとしても
洋ナシは嫌い、と
言った
あのひと
伝えるすべも ....
どこから夢で
どこまで夢だったのか
わからない
という 朝
さざ波がたっていたので
ただ
風をさがした
前に進むための
1オンス
やがて
なにもか ....
気がつくと きみは
魚になってしまっていたので
ずっと
きみを知っていたのに
はじめて見たような気さえした
望遠鏡をのぞくと いつも
波がよせては砕け
飛び散る
セロハ ....
その時のぼくには
どんな光も
光 だった
高層ビルのあちこちでは
松明が焚かれ
人はそれを
空から眺めては
都会などと
よぶ
灯台ならば
向かうべき先を
教えてく ....
呼吸したり
成長したり
引き潮を待ったりしてたら
20億年
あっという間に過ぎた
海底では
あらゆる生物が
地球を
ぐるりとくるんでいる
海はまた
それをまるごと
く ....
傾きはじめた太陽が
ボンネットで屈折し
ぼくを射す
さよならを言い出したのは
ぼくで
結局のところ
決めたのは きみだから
ぼくは フラれたのだろう
車は無駄に走り続け
困り ....
四方の壁に
お気に入りのタペストリーを
隙間なく
貼っつけて
自由と
孤独は
いつでも紙一重だ。
などと つぶやいている
地下室では
いつも
ひとりぼっちだ
薄い天 ....
しゃがみこんでいたら
かたつむりが横切ったので
雨はどうして降るの?
と、問いかけてみた。
かたつむりは
にょきにょきとツノを出しただけで
何も言わずに
つるりと通り過ぎた。
目玉 ....
水路に打ちつけた
足
あるいは カラダ
案内いたしましょう。
永遠の少し手前
果てのない海の
目印に
鳥や魚たちの旅は
今この時もなお続いている
なにを目印 ....
今から
向かいます。
と
彼方からの発信を受けて
待ちきれずに
窓枠から
片目をのぞかせる
目の中に飛び込んできたのは
方向音痴の雨粒だけだった
そういえば
....
すきま風に押され
宙を舞い
テーブルの上
こっちが裏だ。
こっちが表だ。
裏だ。
表だ。
裏、表、裏、表、裏
と
小競り合い
すると
いらついたように
はらりと飛ぶと
....
草むしりの昼下がり
庭の芝生に紛れる
名も知らぬ青く小さな花
ひとつ。
ぼくは 一瞬の迷いもなく
それを引き抜いた
玄関の前の電柱の下
にも
と、思ったら
たんぽぽで
....
両思いなんてものを
当人よりも先に
他人に知られてしまった
ときは
ひどく やっかいだ
必要以上に
ぐるぐる ぐるぐる
と歩かされて
息苦しいこと
このうえない
それでな ....
新しい長靴に浮かれて
水溜りを探し
右足をそっと入れると
次の瞬間 目が回り
どこかに迷い込んでしまった
「噴水の広場」
あやまって
噴水の真下に立ってしまった
と 思 ....
そこに訪れるたび
答えをさがす
水面から急潜行すると
彩色をほどこした
森がまぎれもなく存在している
潮流に逆らうことなく
揺れ傾いている
イソバナを縦横斜めに
宇宙遊 ....
街外れの小さな本屋で
彼女と偶然再会した
本屋でよかった。
きりりとした空間では
おしゃべりにならずに
すむ
彼女が手にしている
水色の背表紙の本が何であるか
なんてことは
....
いつだって
熱くなれるってのは
うらやましいこと
このうえない
放出するだけが
能じゃないことも
ちゃんとわかってる
から
やられる
きみの額に
フライパンをのせ ....
お菓子の家は
どこにあるの。
雲ひとつ見つからない
青く平べったい空が広がった
あの日
雲だけでなく
あの人までも
見つからなくなった
心からあの人を
信じてきってい ....
れんげの土手を揺らして
ごうごうごう、と
やってくる
葉桜の一本道を突っ切って
ひゅうひゅうひゅう、と
やってくる
門柱に横っ面ぶつけて
カンカン、カンカン、
鳴く
耳障 ....
きみの通り道に
ぼくはいつでも落っこちている
目立つように
とはいえ ひっそりと
もしもし
誰かさん 落し物ですよ
ビー玉のように光るでもなく
目覚まし時計のように鳴くで ....
「ラムネ買って」
「チョコレート欲しい」
そう言ってねだる子供達に
困り果ててなお笑顔の母親たち
あのころ
欲しいモノといえば
せいぜい駄菓子屋のおばちゃんに
100 ....
死んだつもりで生きなおせ、と
誰かが言ったけど
死んだつもりになんて
なれない
ぼくには過去があるし
ぼくには記憶だってある
こんちくしょう
死んだつもりになんて
なら ....
風が吹く中
残った一つは ひどく必死だ
仲間たちはみな
とうの昔に 風に乗って
遠くに行ってしまった
いや もしかすると
意外に近くにいるのかもしれない
しかし 残った一つは
....
押入れに顔をつっこんで
ぐるりと見回したら
天井の端っこに
小さな穴ぼこがあいていました
穴ぼこの向こうは
下から見る限りでは
ただ ただ 暗闇でしたので
なんだか怖くなったぼくは
....
そこに宿った
小さき 命
光を浴びることのなかった
小さき 命
その人の涙は
暗闇にひとすじ
混じりけのない
透明な線を描く
ぽつり、と落ちた水溜りには
空の雲が映って
....
入り口は すぐに見つかった
もう何年も
ここでこうしています
と、いった具合の
あぐらをかいた白髭の老人から
地図を手渡される
地図はすべて
記号化されており
懐中電灯はな ....
空が笑ったら迎えにきて
そう言って
きみは去っていった
わかった
とぼくは言った
ぼくは
今もあの時のあの場所に立ち
一歩も踏み出せないまま
シャボン玉をとばしている
....
空が群青を増す
黒い鳥の列は視界を横切り
どこかの汽笛をよそに
寝床に向かう
遠い汽笛、の中では
知らない誰かが
知らない誰かと
別れ、を歌っている
そこには色さえも、ない
....
昨日の夕やけを
ぼくが持ち帰ってしまったことを思い出して
朝起きて、あわてふためいた
夕方までに返さなければ、
そう思いながらも
休日の時間の流れがぼくを誘惑する
珍しく
....
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