望月 ゆき

れんげの土手を揺らして
ごうごうごう、と
やってくる

葉桜の一本道を突っ切って
ひゅうひゅうひゅう、と
やってくる

門柱に横っ面ぶつけて
カンカン、カンカン、
鳴く

耳障りな表札は
やってきたそれに剥がされ
どこかへ、飛んだ

行方は気にならない
けれど
あのひとが迷ってしまうのだけは
困る

門灯の下
ダンゴ虫の行列を、目印に

ここへ来る途中に
あのひとまでも
巻き込まれて
飛んでってしまわなければ
いい



自由詩Copyright 望月 ゆき 2004-05-14 00:29:20
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