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水銀の光の一粒が
横へ横へと動いている
ゆうるりと回転し
他の光をかき分けている
てのひらを巡る
遠いみちのり
つもるうつろ
熱の轍
まるめられた透明が ....
一枚の地図が置かれた
薄暗い部屋のなかで
手のひらに生えた双葉を
見つめていた
そこには居ないものの影が
たくさんの影に混じっている
やわらかい草と硬い草の境いめを
音はまぶしくかき分ける
紫に囲まれた桜色の道を
ふたりは手をつないで歩い ....
色を伝って
つなわたり
風と窓枠
夕べの衣
水に濡れたままの効能書き
治りたいのでしょう
治りたくないのでしょう
あなたと一緒にいたいのでしょう
木の香りがいいでし ....
すがたがすがたを
かたちがかたちを追いかける
線だけがゆうるりと
異なる時間に重なってゆく
光と無音がつくるまなざし
視線の端で 笑みの隅で
あなたはあなたを ....
夜の街を越えてゆく蝶
飛ぶものたちの音は聞こえず
ただ光の散った跡だけが
道の上をつづいてゆく
雨は低い空にはじかれ
羽のように銀を流れる
光の殻の外側に
飛 ....
窓から世界が見えすぎるので
何度も何度も触れつづけては
指とガラスをたしかめていた
消えた素顔をたしかめていた
描かれた線に雨は重なり
音だけを残して見えなくなった
....
小さな手
小さな目
欠けた空を映す鏡に
歌のかけらを置いてゆく
重なりつづけ
重なりつづけ
どこにもつながることのない
造られた花のような子供たち
たじろぐ腕をとり
....
午後三時の道の上
薄目を開けて寝そべっている
おまえの見る夢は多すぎて
電車がすぎても目覚めない
食い散らかして 蹴飛ばされ
胸も腹も治らない
同じ道 ....
おだやかなのに
おだやかでない
雲の陽の今日
この翳りの日
聞こえくる歌
不思議な歌
矢をつがえることなく
矢を放ち
届くことなく
消えゆく軌跡
向かう先なく
散 ....
人のなかに 波のなかに
言葉を放ち
よろこびもしあわせも捨てようとしている
見知らぬ雨 見知らぬ路
見知らぬ緑
石にはね返る言葉を見つめていた
誰もが居るのに 誰も見えない
....
ひとりの子が
ひとつの楽器の生まれる様を見ている
作るものも
奏でるものも去ったあとで
子は楽器に愛しげに触れる
おずおずと うずくように
楽器は
花になる
新しい言 ....