高森草庵の休耕田
トンボ池の辺
俺たちはマコモの葉陰で出会った
その隠れ帯の中心に
少しずつ 少しずつ
確かめるように近づいて
恋人の懐に潜り込んで
伸びた4対の肢に触れる
特に交接す ....
天体望遠鏡を覗き込んで
名前の無い星を探していたんだ
そこにいるかもしれない住民に思いを馳せながら
空想の成分のうち過半数は欲望
心はいつまでも年を取らない
信じていたあの頃からずっと
....
林檎のかおりがする 天の河
もう随分と走ってきた
星へのひとり旅
白十字も恐竜の化石の海岸も通り越し
鳥を獲る人は、とうに降りてしまったし
銀のすすきの野をみるために
列車の窓を開 ....
生命を軽視して
ぼくはいきている
煙草を吸うし
お酒だって飲むし
眠たい論議と
他人行儀な親近感で
いつまでたっても
あしどりは重い
たかが芸術さ
たかが言論の自由さ
そう ....
死の淵の
沼の中から浮き上がり
息を始める餓鬼の手があり
幽霊の ように生きるアナタ 目の隅に
ひとつふたつ みっつよっつと あてもなく ....
助手席からの運転席は
それだけで夜景のようです
スピードメーターや
なにかの表示
警告
インジケーター
時計
ぴこぴこ
ポジティブムーンとネガティブムーン
空に見えるもの研究 ....
【懐かしきセーヌ川の畔】
かつて心は麗らかな春のように愛で満たされていた。
あなたと何度も歩いたセーヌ川の畔路には
今もあの頃と何ひとつ変わらぬ彩りの花が咲き ....
おれんじ色の船にのって
ぼく砂漠へ行くの
降りしきる流星群を見つけたら
きみに長い長い手紙をかく
それからポストを探して
三千年の旅をする
早朝
タイヤチェーンの着脱場を通過
車は
白河から羽鳥湖高原へ疾走する。
すれ違う車両はなく
道路上には数羽のカラスが
カラスはよく肥え
このあたりのもの生りの良さを示す。
態 ....
車輪の一つ取れた車が
鳶のように夜の道路を柔らかに滑っている
その滑空は
ときに私を恐ろしくさせる
明けることのない夜の中
草を撫でる風のように
その車は
欠落していることを感じさせずに ....
人を想い、国を想い、
世界を想い、心を想う。
この世界は繋がっていて。
私たちはいつだって一つで。
あなた達のその瞳に映る青も、
その耳に触れる風 ....
01
図書館にパンが落ちていたので男は拾って食べたのだが、それはパンではなくムカデの足だった。
02
図書館の大砂漠で遭難した司書は一週間後に救助され、その翌年には大統領になった ....
彼女の寄越す手紙には
決まって
花びらが添えられていた
『書簡の柩』
それは時に
桔梗であり
朝顔であり
胡蝶蘭であり
種類は定まらず
時には花びらだけでは
何の花か解 ....
甘い甘い甘い
姉に守られる殻の中の脆弱な子供
痛みを知っては殻へと戻っていく
安全地帯でしか自分をさらけ出せないの?
考えなしの警戒した猫
あなたがそうする事が、
姉の立場 ....
静か。
過去、いくつもの過去が来て
未来、いくつもの未来が来て
いまきみに重なる。
ぼくは息をのむ。
西日に映えて、
....
両手を伸ばして辺りを探り
愛しき息子の名を幾度
砂粒噛み締め水払い
啜る泣き声耳澄ます
滴を模した土塊天井
濾過した甘水殻を刺す
足先濡らす古池潜り
あの子の波紋を手繰り寄せ
....
塩漬になるまで、まだまだかかりそうだから
きっと 大丈夫だね。
机の上で
ふとこくり。
一瞬が十秒になり
十秒が一分になり。
かすれていたイマージュが
少しずつ
はっきり現れてくる。
あなたの全裸が
球体の曲面に
映しとられる。
....
忘却の波が渦巻いて
私はやるべきことをやらず
ただいたずらに先延ばしをし
己の責任から逃げるように
布団の上で眠っていた…。
そのときは、思考を整理することで
忘却の波から ....
赤血球とか、白血球とか。深夜に光るのはそれだけで、あとはずっとだんまりを決め込んでいる。寒い、と震えるのはあなたの亀頭。許せない、とつぶやくとそれはぱち、と音を立てて消えた。帰ります。ぱち、ぱち、ぱち ....
恋人たちが
裸になる夜は
計算が合わない
数が音に
なってゆくから
建築物の息づかいも
聞こえてきたよ
スポンジみたいな
緻密なリズム
さびしさの背中に
スプーンを落として ....
真夜中に部屋の中で一人
耳を澄ますと聞こえる心の音
沈黙の中で奏でられるピアノ
同じテンポ・同じ音階で
人の心に迫り来る音がある
写真立ての中に映る懐かしき人々が
時を ....
この世の全てが{ルビ塵=ちり}である故
今・背負う重荷さえ
いつかは{ルビ宇宙=そら}に
消え去るでしょう
この世の全てが塵である故
自分を責める者さえも
{ルビ永遠=とわ} ....
僕の
大好きな人が
川の向こうの町に引っ越した
喪服の列が東から西へと
空を覆うと
僕は 川を渡れる
夜は死ぬことを許すのだ
ななつ
神棚
薬の味の酒
雪
ましろの森
難転
待つを聞く
年神
貧乏神と力を合わせて福の神を追い払う
日本昔話が、日本的混沌を表わしていて好きだ
難を転じ(南天) ....
閃きと思いつきは違う。
置き忘れた荷物を取り戻すようなマネはしない。
必要ないからさ。
くたばり方を考えるよりも、犯す方法を模索する。
考える前に思い知らされて、及ばない時 ....
エントロピーが増大しない方向へ
コマを進めようということになった
博士の愛した数式は
イコールでだけ 息継ぎをする 走りながら
走りながら 本当のふりをした 走りながら
....
小さいながら我が家の庭には
大きな松の木が植えられていた
初夏の頃には松ぼっくりをつけるその木は
祖父によるとヒマラヤスギという種類だそうで
松ぼっくりのできる杉ということが
当時の私にはと ....
僕の声は届いているのでしょうか。
愛や夢や希望を、いくら声に出しても。
どこにもカタチはなくて。
空気中を浮揚して。
どこにも収まらず、何事もなかったかのように。
消えて ....
空を溶かしたような
この海が
わたしの心の奥の奥を
綺麗に洗ってくれた気がしました
空と海が重なる此処なら
泣いても
全て飲み込んでくれそうで
心の雨もどしゃ降りに
降らせてみれば
....
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