すべてのおすすめ
降る雪は空から戻る天主堂
記念像花火に涙をかざりけり
慢月や 肢と死と飴の 紅狂い。
吸い交わし煙草の縁の紅い痕
{ルビ梳=くしけず}る手折りし秒針束にして
白日に独り吹かすや冬の薔薇
蒼き実を砕く刹那の散る花火
糸を吐く蚕の背には走馬灯
屁の臭い誰だ誰だ ....
木の芽吹く 枝の指さし 春の雲
枯れ草に 溺れ顔出す すみれかな
春光や「カレーの市民」の尻の張り
春光や決死の像に漲りぬ
彫像の裳裾の奥へ春光る
春光の中や塑像の蹲る
緩みなく「考へる人」春早し
春立ちぬ考へること生きること
地 ....
寒い空 空も思わず 白い息
うつし世は春雨なりき芝居果つ
渡り廊下の左右より春の闇
洗ひ髪夜しか逢へぬ人と逢ふ
揚花火仰ぐ横顔盗み見る
首筋に跡を残せし残んの蚊
衣かつぎ妻は家では酔へぬも ....
梅雨空がバックネットを押さえつけ
営業は蝉の耳鳴りエレベーター
夕立の泡をけとばすハイヒール
浴衣では夜の匂いにとけてしまう
春霞 街照らしゆく夜明け前
花びらは雨に流され河口へと
砂場には散り花盛られし豆器
花びらに はしゃぐ声なき廃校の庭
打ち寄するものみな死せり海灼くる
草いきれ何もかも恥づかしきとき
雲の影渡りてゆけど砂灼くる
はさまれしメモの謎めく書を曝す
切るものと刺すもので食ふ夏料理
*
....
揚げ雲雀
東京の空は小さし揚げ雲雀
芝桜しゃがんだ犬と小学生
燕来て一瞬消える歩道橋
薔薇胸に泣き崩れたる送別会
陽炎に溶けてし ....
花見
花散らし絵文字並べて恋の文
花を褒め手料理を褒め花見かな
若やいだ声で応える花の宴
声もよく器量もよくて花踊り
花暮れて裾 ....