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座ったときの
長さが
一体なにを証明するのか
わからないまま
――座って見る景色はほんの少し懐かしいけれど
――座ってみる景色は背伸びする必要がないから
私は
計られ続けてきたけれど
 ....
洗いすぎて
ごわりとした
ネルの小さなパジャマ
ふたつめのボタンだけ
なぜか赤い糸で
不器用にくくられている
夜泣きのたびに
私にしがみついた
熱を帯びた袖
黄色いライオンの模様
 ....
春という素性の上に
細いすじがねを
うっかり高く伸ばしてしまった
ふたりは
よりかかりあう
その寸前で
定冠詞のような
小さな花を咲かせている

あなたはわたし
わたしはあなた
 ....
わたしに
ゆ という文字を
教えてくれた人は
あたかもそれを
ひとふでがきのように
描いてみせるので
その曲線の美しさに
魅せられたわたしは
日暮れて
昏くなるまで
いくどもそれを ....
ペットボトルのごみの日
中身(心)はもうとうになくて
キャップ(顔)やら
包装(洋服)やらを
捨て去ったら
みな
潔い裸になった
とても清々しいごみの日には
カラスさえも
素通りする ....
土踏まずの深い足裏で
たわわに熟した葡萄を踏みつぶす
たちどころに
赤紫の液体が
{ルビ箍=たが}で締められた
大きなたらいの中でほとばしる
秋の森は
少年と少女の息遣いで色づき
どこ ....
想像してみて。
この柔らかな死体が
何を思って生きていたかを
たとえば
生きている理由とか
翼の意味を考えただろうか
空を飛ぶ機能が失われたそれは
時折はばたく真似事をするだけの
使い ....
記憶の糸をほどく
風景や音や肌触り
縫い合わされていた
いくつもの欠片が
ふたたび熱を取り戻して差し出される
思い出は語られたがっているのだろうか

子供の頃ひと夏を過ごした祖父母の家
 ....
底から
蒸発した
温かい水が
蓋裏で
冷たい水になる

ほんの少し
傾けただけで
それは
ふたたびのしずくとなって
ほとばしる

涙の成り立ちを
まぶたの裏で描きながら
わ ....
まっすぐに
引けたためしがない
まっすぐに似た線なら書けるのに
フリーハンドで書く
まっすぐは
ほんの少し曲がっている
骨が湾曲している
私のなかに
直線がない
失ったわけではなく
 ....
母の手作りする洋服は
大体において
あらかじめ寸法が大きかった
未来が足されていたから
子どもはすぐ大きくなっちゃうからって
それは言い訳というより
有無を言わせない印籠のように掲げられた ....
星のみえない夜にも
星は存在する
風にふれない丘にも
風は存在する
あなたが消えたあとにも
あなたは存在しつづける

両のてのひらを
まるくして合わせる
透明な卵だよ、ほら
わずかに赤を含んだ
初秋のねこじゃらしが
風にそよぐ
そよがれて
よみがえってくる
植物ではなくて
あいつらのしっぽだった記憶が

猫が
ねこじゃらしの横を
素通りできないわけは
 ....
ねじられた
つぼみは
夜のさざなみに
ゆるゆると洗われて
空が
ほんのりあけるころ
星の形に開きます

命、うすむらさきに笑ってる

私の心も
ほどけてゆきました
天気予報が
いい具合にはずれて
空に陽が差してくる

中学校の校庭
トラックに引かれた真新しい白線
「出陣」の文字が描かれた入場門
砂埃の匂いがくしゃみを誘う
テントの下に置かれたキャ ....
引越しが落ちついて
さあどこかに食べに行こうという算段になり
歩いていける距離といえば
とんかつかフランス料理風か喫茶店かお好み焼きだった

「お好み焼きアキちゃん」は
とびきりの笑顔のふ ....
メスザリガニが
身籠った
腹に何百もの卵を抱え
絶えずゆらゆらと揺らして
新鮮な酸素を送っている
まるで
大切なものをあやしているように

ハハザリガニが
出産した
小さな赤ちゃん ....
そら
くう
から



変換キィで
世界は変わる

くうですか
くうですね
ひとしくみんなくうになってゆきました

昨晩はよくふりましたなあ ざんざばらん
おかげでからっ ....
夕暮れても
大地の熱は
冷めやらず

もうすでに
花も穂も枯れ
ただの茎となったすすきは
すとろうとなり
土に埋まる子らは
それを吸って
生き返る

一本であったら
孤独に揺 ....
枝豆を茹でる
さやには産毛がひしめいて
そのあおい膨らみに
おまえが未成熟のまま
刈り取られてしまったことを
想う
夕立は夏の序曲

塩をふって
硝子の器に盛り
冷蔵庫に冷やしてお ....
パチンと弾けとんだ
洗濯バサミ
ひらいて、はさむ
どんなに風の強い日だって
あなたがいいというまで
ただもくもくと
しがみついてきた
のに

繰り返されてきた
しごく簡単な仕組みが ....
ここに
コンクリートの破片がある
砂と水を固めて
作られた人工の石たち

人が集う会館になり
公園の遊具になり
学校の名を刻む門となり
新しい道となり
駅となり
小さな島に架かる橋 ....
圧縮された白い時間が
空に取り付けられた
タイマー仕掛けで吹き出した
入道雲

あなたが使うシェービングクリームみたいだ
毎日せっせと伸びるヒゲ
剃っても剃っても
誤作動せずに
めげ ....
──わしが死んでも
  この時計は捨てんでくれよ

親父はよくそう言っていた
死んでから
それがたったひとつの
遺言らしきものだったと思い当たる

祖父がやっていた
はんこ屋の店先に ....
人は
はぎとった他者に
記し
記してきた

鳥は記さない
慈しみあう
つがいの声は
白い森に響き
溶けて消えていくだけ

{ルビ草子樺=そうしかんば}は
カバノキ科シラカバ属  ....
閉じられた瞼は
眼球にやさしくかけられたさらし布
或いは
フリンジのついた遮光性の高い暗幕

時折
なにかに呼応して
波打つように
揺れる

ベビーカーのハンドルに止まったちょうち ....
おそらくは
やわらかな春の香り
おそらくは
かぐわしい早乙女のような
おそらくは
この世に用意された
おびただしい
喜びと悲しみのあわいで
おそらくは
それは
幻の香り

さく ....
浴槽の栓を抜く
しばらくは何事も変わらない水面
さざ波のそぶりさえない
今 渦中では
見えない引力に導かれ
出口へと
まさに水が
わあわあ殺到しているというのに

ことの始まりは
 ....
犬に
おやつをあげました
これきり、と言うと
少し節目がちになり
それまで動いていたしっぽが
ぴたりと止まります

正直な犬
おまえは決して嘘をつかないから
嘘をつく人間は
失われ ....
りゅうのあくびさんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(119)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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- そらの珊 ...自由詩2614-4-20
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葡萄酒- そらの珊 ...自由詩20*13-11-1
鶏供養- そらの珊 ...自由詩2413-10-29
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十月の扉- そらの珊 ...自由詩18*13-10-9
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