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草市に うみほほづきを購いて
海の味する遠き幼日

朝ごとにくぐもり啼ける鳩の声
故里に啼く森を想えり

西陽射す路に日課の水をまく
秋めきし風に虹たてながら

白白と待宵月は行き来 ....
我が心食ろうてみれば塩味の目から零れてそっと檸檬を ラッキョウの香りくりやに満ち満ちて
入りくる夫子その度に言ふ

土用干しの梅の匂いに幼な日を
想い出させて母を恋いおり

明けやらぬ朝起き出てて吾がために
さわらび摘みしと君が給いぬ
 ....
干し物をたためる時の充足を
胸に満たしめ一日が過ぎぬ

八十路まで あとわづかなり吾が側に
五才の犬が ひるねしている

梅雨空を狭めて広がるバショウの葉
微動だにせず風も無きらし
近くにて花火の爆ぜる音のして
幼等の声 広がりてゆく

指染めて高菜をもめばよみがえる
故里の畠にゆるる菜の花

窓明けて寝ながらに見る夏の夜
高層ビルの窓に動く人影

夕立の前 ....
新雪を犯して歩む足跡が黒く
続きて物語めく

人走る足音ひびく小夜床に
大寒と言う静けさかとも

蓑虫が瓦に下り風花に
吹かるるが見ゆ窓に寄るとき

胸のすく音させて割る うす氷
 ....
それぞれの皿に苺を盛り分けて
嫁ぎし娘の数も入れおり

盛装の娘の席は遠く しばたたく
目にぼやけゆく宴の席に

夕食の時どき夫は嫁きし娘の
空席言いて酒を呑みほす

月を取れ星 ....
川底の小石流れるさま見えて
美しき水に冬陽集まるる

川底はコンクリートになりゆくか
工事済むあとの水は澄めども


園児等が短冊吊す七夕に
幼き頃の吾娘が重なる

七夕に ....
リフトより若狭の海を見渡しつ
子等たち如何にと思い出したり

咲き残るカンナの花をめぐらせて
淡路の一角家の明るみ
(銀婚式の旅紀州へ元日 昭和四十九年一月)

吊革に背伸びして背伸びし ....
背景に滝を入れて撮られ居り
見知らぬ人との旅の安けさ

惜しみなく冬陽を浴びて青みたる
蓬のつづく海の辺を行く
(和歌山の燈台 日本の最南端)

銀婚の旅と出できし紀州路に
海の景色は ....
夜を覚めて雨音に肌の潤えり
冬の旱に満ちて心良し

霜などは年中知らぬと紀州路は
オランダ豌豆 冬花盛り

サルビヤの花立ち枯れて残る紅
紀州路を行く旅の実感

それぞれに旗を揚 ....
峡の宿に熱き甘酒すすりつつ
硝子戸ゆすり風移りゆく

屈託のなき表情に寄りてくる
見知らぬ土地に犬の親しもよ

海過ぎて つづらの道にバスは入る
枯れし芒も見る度の味

枯れ落葉 ....
ブルドーザー河川工事に爪上げて
アワダチ草を踏みしだきゆく

谷わたる霧のさざ波見て過ぐる
炎ゆるが程の紅葉なかりし

皮はがれ磨がかれし肌のつややかさ
杉の匂いの立ちこむる里

杉 ....
山の端に今昇りくる太陽に
向いて鳶は羽ばたきにけり
目の前の妖しき影にいぶかりしも
あげ羽蝶なり思はず和む

家毀ち空地となりて草萌ゆる
中に蒲公英艶やかに咲く

北山は吹雪と見えて霞みゐる
吾が行く川辺 陽は燦燦と

山茶花の花 ....
芝草の緑一雨ごとに伸び
犬と行く道 青く広がる

街路樹の高き梢に銀杏の
黄金に熟して風をはらめり

玉葱を吊して土用の暑にこもる
風吹くらしき つるバラゆるる

純白の酔芙蓉咲 ....
洗剤より生れしシャボン玉の遊泳を
掬えば窓に にげる虹色

シャボン玉掬はむ姿勢 すかされて
運動神経 鈍る年かと

俄か雨に荷物ぬらして声もなく
ちり紙交換 信号に止まる

 ....
草あかり部屋の中までたちてくる盛りゆく
飯も腕も染まれり
       (嵯峨花の家)

行きあたる程に飛び交ふ黒き蝶
幻想めきし庭に立ちたり
          (嵯峨花の家)

 ....
長雨の晴れておちこち競ふごと干し物
ひらめく冬空の下

おしどりが小さき雨の波紋消し
みどりに染みし池をめぐれる
            (苔寺にて)

花冷えの椿の寺はひっそりと五色の ....
《宿題は涼しいうちに済ませましょう》 お前の胸は痛むだろうな


ぢあぢあと蝉が鳴くのを外に聞く お前の胸は痛むだろうな


世を嘆き人を憎んで夢の中 お前の胸は痛むだろうな

 ....
あの夏のサナギの記憶はありますか
(ランドセルに隠した羽根の罪)




「人生が退屈なんだ」とつぶやいた
僕を殴るように 夏が 夏が 




しましまの正義を装填した銃を抱 ....
めまぐるしく排ガスの数字変わるなか
河原町の信号渡る

老い母の如何にと受話器に声を聞く
会いたくなりて声とぎれつつ

赤ちゃんの取り替へ事件見ておりし
背丈伸びし子が眞違を問いぬ
 ....
今朝ほどの言ひすぎし事悔い乍ら
帰りくる子のおそしとぞ待つ

帰り来し子の淡淡と語りかく
明るき声に救われしなり

屑かごのプラスチックは音たてて
生きもののさまに動きを見する

も ....
手の上にカプセルの薬あそばせて
次ぎ編む服の配色と決む

夢に見しことくり返し夫語る子等は
留守にて話題ひとこま

硝子戸に写る雪影大きくて二人の夜が
童話めきくる

首すじ ....
夏のぬくもりってどんなの?と少女、軋む氷のかけらを溶かす

この雨が上がればさよならの予感半袖の先爪に塗りこむ

果汁がどのくらいの夏ならいいの太陽と日焼け止め調合

何も考えずに揃って鳴 ....
石なげて しばししてより音のする
ダムの高さに心おののく

静かなる師走のダムに労務者の
網引ける声 四方にこだます

つぶらなる茨の赤き実の陰に
するどきトゲが短陽に透く

 ....
井戸掘の職人たちは泥つけし
顔そのままにしばし仮眠す

階下にて九州土産の風鈴が
台風予報の風に音たつ

名月に逢ふひとときを足らひゐて
たゆたいがちに春間近かなり

【昭和四十八年 ....
里芋の葉に露玉を宿らせて
風も光りて土用に入る日

身体ごとゆるるが如き北山の
杉のみどりが視野に広がる

微熱ある夜を目覚むれば
枕辺に誰がつけくれしか蚊取香匂ふ

熱湯の ....
夫婦喧嘩仲裁は娘が引受けて
吹き出すはめとなる雛の前

初出勤明日に控へて幼児期の
日記を見せて娘と語り継ぐ

大雨のあとの賀茂川に流れ込む
廃液は濃き染め物の色

気まぐれ ....
ストーブの上に煮つまる匂いして
今宵は独り本に寄りゐる

支えゐる心重しと思ふ午後
陽ざしがいつか雪となりゐし

いやされし言葉を胸にあたためて
ショールに頬を埋めて帰る

 ....
藤丘 香子さんの短歌おすすめリスト(113)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
54P_「短歌2」より- むさこ短歌12*07-8-12
嘆塩- アマル・ ...短歌7*07-8-9
53P_「短歌2」より- むさこ短歌3*07-8-8
平成十九年八月六日- むさこ短歌3*07-8-7
52P_「短歌2」より- むさこ短歌8*07-8-3
51P_「短歌2」より〜_昭和五十年- むさこ短歌7*07-8-2
50P_「短歌2」より〜_嫁ぎゆく娘- むさこ短歌9*07-7-31
49P_「短歌2」より〜七夕、梅雨etc- むさこ短歌5*07-7-30
48P_「短歌2」より〜47歳の頃(銀婚式)__etc- むさこ短歌5*07-7-29
47P_「短歌2」より〜47歳の頃(銀婚式)- むさこ短歌4*07-7-29
46P_「短歌2」より- むさこ短歌7*07-7-27
45P_「短歌2」より- むさこ短歌5*07-7-27
44P_「短歌2」より_〜北山杉_etc- むさこ短歌6*07-7-26
いま一番好きな自分が作った歌- むさこ短歌10*07-7-25
43P_「短歌2」より- むさこ短歌5*07-7-25
42P_「短歌2」より- むさこ短歌9*07-7-24
41P_「短歌2」より- むさこ短歌10*07-7-24
40P_「短歌2」より_〜嵯峨花の家_etc- むさこ短歌8*07-7-22
39P_「短歌2」より__〜苔寺、椿寺_etc- むさこ短歌9*07-7-22
お前の胸は痛むだろうな- 鳥獲短歌9*07-7-22
不完全少年- しろいろ短歌8*07-7-20
38P_「短歌2」より- むさこ短歌5*07-7-20
37P_「短歌2」より- むさこ短歌8*07-7-20
36P_「短歌2」より- むさこ短歌6*07-7-17
もぬける夏- 唐草フウ短歌14*07-7-17
35P_「短歌2」より- むさこ短歌7*07-7-16
34P_「短歌2」より- むさこ短歌5*07-7-15
33P_「短歌2」より- むさこ短歌12*07-7-14
32P_「短歌2」より- むさこ短歌5*07-7-13
31P_「短歌2」より- むさこ短歌9*07-7-11

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