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手を洗え
その身じろぎする小さい肉を
きみの野蛮な口に運ぶのならば
何よりも先にまず手を洗え
汚れた手で肉に触れてはならない、
汚れた手で肉に触れることは
その新鮮をそこなうことだ ....
祖父のあとをついていく。
海を見渡す墓地で、親せきたちが鎌で草を刈る。わたしも草を刈る。
母が野の百合を、見つけ出した墓に供えた。
波は白い。
午後3時に建物の外に出ると
ひとっこひとりいなかった
というのは冗談で
こんな大雨なのに
腕を組んでいる二人組がそこら中にいる
かくいうあたしだって
日付が変わるころに
お酒に飲まれ ....
一度切りの湾曲をとうに終え
錆び果てたガードレールは死んだように安堵している
その影に紛れた舗道の一部は黒々と陥没し消滅している
その上空を傷付ける有刺鉄線、私ではな ....
逮捕されたそのオトコには
十億円の借金があったそうだ
四十年のジンセイで
どうやったらその借金が出来上がるのか
そしてそのオトコの数年は
十億円の価値のある
ものだったのか
それとも
....
晴れた空は、あまりに眩しくきれいだ
幼い頃、一番欲しいものはなあに?と問われて
そら とは答えられず
むきかごーぶつ と答えた
(空は大きすぎて僕のおもちゃ箱には入らないとわかっていたから ....
たったひとつの睡眠を
羊たちと分かちあって眠る
もこもこしてるね
なんて今日は言わない
めえ、と寝言を言っても口をふさがない
数をかぞえない
何も思い出さない
泣いているこどもは
湯気が立っていて
かわいい匂いがする
抱き締めて
頭に鼻をくっつけて
くんくん嗅ぐよ
産まれたてのときは
わたしの内臓の匂いがした
今も少し
する
....
雨が垂直に
突きささったまま
凍りついた
野の どこかに
愛のひとは
ふしあわせだ
与えるばかりで
奪われない
そんな物語の
かいてある石版が
埋まっている
らしい
今夜は
無性に 胸のあたりが苦しいので
闇の中
家の裏山に ドラえもんを探しに行く
おそらく
好物のどら焼きをえさに
すずめを捕るような仕掛けで
竹篭を逆さにしておけばよい よう ....
くそ じじい と
おまえは また そのすこし
ぽってりとした くちびるを ゆがめて
はきすてるように いうのだろう
なんだよ と
ふたりのあいだにある へだたり ....
ほら
こうして
鈴をつるしたフラスコの
空気をだんだん抜いていく
鈴の音はやがて
震えるだけの記号となって
あのフラスコにわたしは
どうしても
ティンカー・ベルを入れ ....
君にあてて手紙を書こう
便箋
ティファニーの
スカイブルーな
世界は
そうだね
まだもう少し続くみたいだ
ボクは
ボクの周りの
ごく限られた人たちが
平和でいてくれたらいいと
....
多くのヒトにとってみれば
他愛のないスポーツニュースに違いないプロ野球
ストをするとかしないとか
チーム減るとか消えるとか
よくある合理化
よくあるリストラ
別にたいしたことじゃない、と
....
夢の中で土左衛門を土葬にした。
土葬にしたのは火葬にする費用がないからで
金が有れば火葬にする。
火葬にすれば墓が湿らなくて良いし
燐が燃えたりしないので気持ちが悪いこともない ....
お母さんボクは東大にいきます
やりたいことがあるとか、ないとか
これからは好きなことを仕事にする時代なのだ、と
そんな黄色いハローワークで
幸せになれますか
お母さんボクは東大にいきます ....
貴方が唐突に「もう一度生まれ変わりたい」などと言うものだから私は着たばかりの下着を脱いで足を広げて貴方を呼んだ 「この中からやり直そう?」私が笑顔も見せず微笑むと貴方は一度頷 ....
高架の上を幾つもの魂が
赤い光を灯らせて
帰るべき場所へ向う
高架の下では
ダンボールの中でちいさな魂が
仲間に入れてくれと
か細い声で歌い続ける
弱く
さらに ....
4歳のこどもを
正面から抱っこすると
つい4年ほど前には
お腹の中にいたことなど
信じられないほど大きい
わたしたちひとつだったはずなのに
分裂したね
さびしいけどもう元には戻れない ....
よくある職場恋愛で
なんとなく付き合い始めた
きらいではなかったけど
好きかどうかは判らなかった
暇でさびしいから
そういう理由で男女はいくらでも
付き合えるから
慣れてくると
いつも ....
残業もそこそこに
今夜もいそいそと帰ってきた
玄関のすぐ脇の部屋で
かつて母だった生き物が
また呻いている
父の三回忌を済ませた頃から
母は溶け始めた
ビデオテープのように過去を ....
読みかけの詩集を逆さまにすると
文字の列たちは
不ぞろいのビルディングになりました
そして
下のほうにあった余白は
広い空に
しばらくその様子に見とれていましたが
何かが足りない気が ....
バナナが一本
海を底の方へ
ゆらゆら
落ちていきます
見たこともないその物に
身を翻し逃げていく
魚たち
大きなクジラが
大きな口を開けて
ザブンと飲み込む
夜、台所に行くと
....
360度のステップのど真ん中で 僕が
一歩もステップを踏み出せないとき
やっぱり地図は持ってなかったけれど
上品な下ネタに付き合ってくれたきみ
僕が落ち込んでいると朝早くからパン種をこね始 ....
ハエの手のこする音が聞こえるぐらい静かな夜だった
ぼくらは見つめあっていた
なにもごまかしようのない
左右がふとそろってしまった鏡のようなぼくらだった
まばたきの一回で世界が変わってしまいそう ....
わたしがそれを見つけたとき
わたしは28歳
離婚したばかり
バイトを3つ掛け持ちし
年下の男と暮らしていた
年金なんて払えなかった
でも先のことを考えると不安で
毎月5000円ずつ郵 ....
今日から自分をデブだと思うことにした
デブ・・・
そのうち人にも呼んでもらうつもりだが
まだちょっと気恥ずかしい
1.
デブ界に足を踏み入れる
赤ちゃんのような笑顔の石塚
うんち ....
夕刻
おとこまさりの包丁裁きで
頭を落として
からだを開いた
中骨を
刃先でなぞる
膜を破る
洗い 流す
ぴりぴりとあかい
赤は
どこまでも
泣き止まない
鍋の底で ....
そこから逃げてしまいたい心は
きっと次の街からも逃げ出すでしょう
永遠に次の街を求めそして逃げ出すのです
永遠とは輪廻のことです
ふりだしに戻るのです
もっとも醜い鬼がやってくる
....
ひつじが鳴いていた
ひまわりが咲いていた
人がいた 好きだった
目を閉じる
陽だまりのなか
明日なら
死んでも良かった
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